会長特別企画 |
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1. |
冠動脈イメージングで病態に迫る |
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赤阪 隆史 (和歌山県立医科大学 循環器内科)
天野 哲也 (愛知医科大学 循環器内科)
光干渉断層像 (OCT)、血管内超音波 (IVUS)、血管内視鏡、冠動脈CT angiography、MR angiography、などの冠動脈イメージングの冠動脈疾患に対する役割は多岐にわたる。第1に、冠動脈インターベンション (PCI)における責任病変観察である。イメージングガイドPCIは我が国におけるPCIの大きな特徴であり、PCI optimizationに寄与している。第2に、急性冠症候群 (ACS)の原因となる不安定プラークおよび破綻、プラークびらん、といった冠動脈プラークの組織性状観察である。これらは、ACSの発症予測に重要な役割を果たしている。こうした冠動脈イメージングデバイスを有効に活用することによる、病態の詳細把握の重要性に関して討論する場としたい。
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2. |
冠動脈疾患二次予防の残余リスクへの対応 |
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石原 正治 (兵庫医科大学 循環器内科)
小林 欣夫 (千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学)
スタチンが上市されてから30余年を経て、現在LDLコレステロールに対する”the lower, the better”のコンセプトは確立している。積極的な脂質低下療法や他の治療法の発展によって心血管イベントは低減してきているが、依然としてそのリスクは高い。高血圧、糖尿病、喫煙といった古典的リスク因子から、LDLコレステロール以外の脂質、炎症、尿酸といった新たなターゲットまで、いわゆる残余リスクの研究が進展している。本シンポジウムでは、特に心血管イベントの高リスクと思われる冠動脈疾患において、”beyond LDL”に対する知見を深め、新たな治療戦略を探る。
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3. |
心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションの位置づけ |
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清水 渉 (日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野)
中野 由紀子 (広島大学大学院医系科学研究科 循環器内科学)
心房細動(AF)は加齢と共に増加する最も頻度の多い不整脈の一つであり、高齢化が進む我が国において今後も更に増加することが予測される。AFは、脳梗塞、心不全、認知症などの弊害を起こし、QOLを低下させ、死亡率を上昇させる。現在、AFに対するカテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)治療は、デバイスや技術の急速な進歩により有効性・安全性が確立され広く普及している。近年、CAMERA-MRI Study、CASTLE-AF Clinical Trial、CABANA-AF Trialなど大規模研究で、低心機能AF症例に対するアブレーション治療の有効性が証明され、心不全合併AF症例に対するアブレーション治療は注目を集めている。これらの研究を受けて、日本循環器学会・不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)でも、心不全の有無に関わらずアブレーションの適応は同じということがClass IIaで付け加えられた。本シンポジウムでは、低心機能AF症例に対するアブレーション治療の経験豊富な先生方にご登壇頂き、どのような症例が適応になるか?どのようなタイミングで治療に踏み切るのが良いか?心不全非合併症例と同じアブレーション方法で良いか?など、リアルワールドでの心不全合併AF症例に対するアブレーションの特徴や有効性・安全性などを議論したい。
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4. |
心腎腸管連関についての最新の知見
―HFpEFとの関係を考察する― |
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山本 一博 (鳥取大学医学部 病態情報内科学分野)
瀬尾 由広 (名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科)
心腎連関という概念が唱えられ、HFpEFの発症・重症化に腎臓が様々な影響を与えることが多くの研究により示されてきた。近年、このような臓器連関の中における腸管の役割に注目が集まっている。腸管は経口摂取した栄養素を体内に吸収するという大きな役目を担う事から栄養状態を大きく左右する。これまでに栄養状態はHFpEFやCKDの予後に大きな影響を与えることが報告されている。ただし腸管による栄養状態の制御には、その消化・吸収能のみならず、腸内細菌も大きく関与している。このセッションではHFpEFにおける腎臓、腸管の連関について、最新の研究成果を示していただき、我々の理解を深めることができればと思っております。
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5. |
心アミロイドーシス診断治療の現状 |
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泉 知里 (国立循環器病研究センタ- 心臓血管内科)
辻田 賢一 (熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学)
超高齢社会を突き進むわが国において、心アミロイドーシス、特に野生型トランスサイレチンアミロイドーシスは従来の想定よりも高頻度であることが明らかになっている。診断においては、99mTcピロリン酸シンチグラフィが、高い感度、特異度で陽性になることが報告され、診断の広がりをみせている。治療においても、ALアミロイドーシスに対する治療の進歩に加え、トランスサイレチンの四量体安定化剤:タファミジスがトランスサイレチンによる心アミロイドーシスの治療に承認された。また、新規の作用機序を有する薬剤の開発承認が待たれている。まだまだエビデンスの乏しい領域であるため、本セッションでは、わが国の最先端の心アミロイドーシス診断治療の現状をご発表いただき、今後の心アミロイドーシス診療の進むべき方向性を模索したい。
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6. |
心不全治療薬の新たな展望 |
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前村 浩二 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学)
安斉 俊久 (北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室)
近年、心不全新規治療薬として、イバブラジンとアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)が注目され、グアニリル酸シクラーゼ刺激薬の心不全に対する有用性にも期待が集まっている。さらにSGLT2阻害薬は、糖尿病の有無に関わらず、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)に対する有効性が示され、ガイドラインの改訂も進みつつある。一方で、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)に対しては、ARNIやイバブラジンの有効性は示されるには至っておらず、病態に応じた個別化治療のあり方が模索されている。本セッションでは、既存あるいは新規治療薬を用いた心不全治療の新たな展開について幅広く議論を進めたい。
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7. |
肺高血圧症の診断・治療の最前線 |
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佐藤 徹 (杏林大学医学部 循環器内科)
波多野 将 (東京大学大学院医学系研究科 重症心不全治療開発講座)
CTEPHに対するBPAに代表されるように、肺高血圧においては現在でも日本が世界をリードしている診断、治療法は少なくない。一方で、日本では個々の症例に対してきめ細かい医療が提供されるがゆえに、レジストリーや臨床試験など、大規模なエビデンスの質という点ではこれまで世界に後れを取ってきたのが実情である。しかしながら、近年では日本においても真に世界をリードできるだけのエビデンスを残すべく、さまざまな取り組みが行われている。そこで本セッションでは、日本における肺高血圧診療の質をさらに高めるべく、この分野のエキスパートから次のBreakthroughにつながるような取り組みを紹介して頂きたい。
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8. |
心房細動に起因する房室弁逆流:その病態と治療法 |
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石津 智子 (筑波大学医学医療系 臨床検査医学)
福井 寿啓 (熊本大学病院 心臓血管外科)
近年、心房細動に伴う房室弁逆流が注目されている。臨床心臓病学においては、以前より長期持続性心房細動症例の中に、内科的治療抵抗性の僧帽弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全が経験され、病期が進んでからの外科的介入は極めて予後不良であると認識されてきた。現在、心房細動に伴う房室弁逆流は「心房性僧帽弁逆流」あるいは「心房性三尖弁逆流」という名称が与えられ、その病態が徐々に明らかにされつつある。しかしいまだ、だれに、いつ、どの様な治療を行うべきかについての共通した見解には至っていない。本セッションでは、「心房細動に起因する房室弁逆流:その病態と治療法」と題し、僧帽弁、三尖弁、あるいはその両方の異常についての病態に関する研究、治療法についての演題を広く募集し、この、古くて新しい病気について最新の知見を共有したい。心房細動に対するリモデリングの分子生物学的機序、イメージング、不整脈治療、外科治療、カテーテルインターベンションなど、多分野からの演題応募を期待しています。
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9. |
心臓弁膜症の残された課題
―三尖弁閉鎖不全症の診断、治療時期、治療法― |
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江石 清行 (長崎大学病院 心臓血管外科)
中谷 敏 (大阪大学医学部 保健学科)
長らくforgotten valveとして顧みられることのなかった三尖弁が注目を集めている。それには、左心系疾患においても三尖弁閉鎖不全症が予後に大きく影響することが明らかになってきたこと、三次元心エコーをはじめとした画像診断が進歩してきたこと、手術法が工夫されテザリングの顕著な三尖弁閉鎖不全症例に対しても良好な成績が期待されること、欧米で行われている三尖弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療が近々日本でも行われる可能性があることなどが関与していると思われる。本セッションでは、多くの経験を有する先生方に新しい知見を紹介していただき、三尖弁閉鎖不全症の病態と診断、介入時期、介入方法などについてディスカッションしたい。
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10. |
成人先天性心疾患診療のエッセンス |
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先崎 秀明 (国際医療福祉大学医学部 小児科)
赤木 禎治 (岡山大学病院 循環器内科)
近年、成人先天性心疾患の医療、福祉に関する知見が、その重要度、必要度の大きさを反映して集積されてきている。
今回の特別企画では、妊娠・出産、肺高血圧、心不全管理、不整脈管理、移行医療、再手術、あるいはFontan、右室体心室循環、Fallotといった疾患特異的な問題等の成人先天性心疾患に関わる幅広いテーマの中から、そのエッセンスをまとめてお話していただくエキスパートを公募してディスカッションしたいと思います。
ふるってご参加、ご応募ください。
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11. |
臨床を見据えた心臓解剖学 |
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川合 宏哉 (兵庫県立姫路循環器病センタ- 循環器内科)
井川 修 (日本医科大学付属病院/セントマ-ガレット病院 循環器内科)
循環器疾患の理解、病態評価、治療にあたっては、正確な心臓解剖の理解が必要であることは言うまでもありません。治療前、さまざまな手法を駆使し解剖情報の詳細を得て、病態評価に活かす努力がなされているとは言え、得られた情報を正確に「真の解剖情報」として評価しているかどうか疑問な場合も少なくないと思われます。その解釈と臨床応用には、臨床所見を正確に解剖へ反映させることのできる臨床力と正確な解剖学的知識が求められます。
一見、当たり前と思われる構造であっても、臨床を考慮した解剖学的な目で改めて眺め直すと、そこには「新たな発見」と「思いがけない展開」が生まれてくるものと考えます。
本セッションでは、演者の皆様には構造解釈のピットフォールも含め心臓解剖を解説いただく予定であり、構造を考え直すきっかけとなることを期待しています。
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12. |
高齢者心不全におけるフレイル評価とその対策 |
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猪又 孝元 (北里大学北里研究所病院 循環器内科)
佐藤 幸人 (兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科)
高齢化社会を迎え心不全患者は増加しつつあるが、心不全の平均年齢は80才を超え、ガン、認知症、腎不全などの併存症も多く、独居、低収入など社会背景に問題がある患者も増えている。フレイルとは,老化に伴う種々の機能低下を基盤とし,さまざまな健康障害に対する脆弱性が亢進している状態で、健康障害に陥りやすい状態を指す。高齢心不全患者ではフレイルの合併も多いが、フレイルは適切な運動介入,栄養介入,社会参加などにより健康な状態に改善する可能性がある。このような患者群には医師による医学的介入だけでなく、多職種が多面的に介入する必要があり、本セッションで検討したい。
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13. |
負荷心エコー図の今後の展望 |
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大手 信之 (名古屋市立大学大学院医学研究科 循環器内科学)
平野 豊 (近畿大学附属病院 中央臨床検査部)
負荷心エコーはエルゴメーター等の多段階の動的運動負荷だけでなく、ハンドグリップ負荷やドブタミン等の薬物負荷から、各施設が実施可能な負荷法を任意に選択して施行している。心筋虚血やviability評価のみならず、種々の弁膜症、肺高血圧、肥大型および拡張型心筋症の重症度評価、HFpEFの病態解明等が多くの臨床現場で実施されている。しかし我が国では広く普及しているとは言い難く、負荷の手順や評価法についても未だ確立されたものはない。負荷心エコーが治療法決定の必須検査として広く受け入れられるためには、今までにはない新しい方向性を示す必要がある。本シンポジウムでは、我が国における負荷心エコー検査の現状と課題について発表していただき、さらには負荷心エコーへの将来に向けた提言をしていただく。
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シンポジウム |
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1. |
重症心筋梗塞治療の最前線 |
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木村 一雄 (横浜市立大学附属市民総合医療センタ- 心臓血管センター)
大倉 宏之 (岐阜大学大学院医学系研究科 循環病態学)
急性心筋梗塞に対する早期再灌流療法によって、その急性期合併症は減少し、長期予後も改善してきた。しかしながら、広範囲な虚血にともなう心原性ショック例や機械的合併症を併発する例の予後はいまだ不良である。新たな経皮的補助循環のImpellaが導入され、これらの症例に対する治療成績の向上が期待されている。一方で、急性期を乗り切っても再発を繰り返す例が存在し、そのような例では長期的に心機能の低下、左室リモデリングの進行によって、慢性期の心不全治療に難渋する場合がある。本セッションでは、早期再灌流時代における、これらの「重症」心筋梗塞例に対する治療をめぐる最新の話題について学ぶ場としたい。
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2. |
重症心不全に対する集学的治療戦略 |
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絹川 弘一郎 (富山大学医学部 第二内科)
坂田 泰史 (大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
重症心不全集学的治療の主役を担っているのは各種デバイスである。心臓の治療ターゲットは冠動脈、刺激伝導系、心構造、心筋心膜の4つであるが、それぞれCABG、弁修置換、VADなど外科的手技に加え、PCI、アブレーション/CRT、TAVI/mitraclip、Impellaなど、より侵襲度の低い治療手段を用い、それぞれの治療の組み合わせから相乗効果を得ることができるようになった。一方、これらの多用は医療費増大、費用対効果の問題を引き起こす。
本シンポジウムでは、デバイス治療を中心に、組み合わせによる相乗効果、特に高齢者における適応とその効果判定、チーム医療によるサポート、など多岐に渡るテーマを取り上げ問題提起をしたい。
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3. |
病理とイメージングから理解する動脈硬化 |
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平田 健一 (神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学)
宮田 昌明 (鹿児島市立病院 循環器内科)
動脈硬化の形成、進展には酸化LDLに加え、近年では血管の炎症が重要な役割を担っていることが注目され、さらには、不安定プラークや血管内皮びらんも血栓形成に関与していることが病理研究や画像検査により明らかにされてきています。本シンポジウムでは、動脈硬化における病理研究や超音波、CT、MRI、PET、IVUS、OCT、血管内視鏡などの画像診断の最新の知見に加え、分子イメージングの最先端の研究を発表頂き、動脈硬化の病態理解を深めたいと考えています。さらに、イメージングにより不安定プラークなどプラーク性状を同定し、適切な治療法に繋げることを目指して、最近の知見を皆さんと共有し、討論したいと考えています。
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4. |
不整脈領域におけるNew Frontier |
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夛田 浩 (福井大学医学部病態制御医学講座 循環器内科学)
奥村 恭男 (日本大学医学部内科学系循環器内科学分野)
カテーテルアブレーションは、マッピングやアブレーション機器の発展に伴い飛躍的な進歩を遂げ、毎年数万人に行われている。しかし、地平線の先に辿り着くとまた新しい地平線が広がるように、技術が成熟し、過去の限界を克服した現在でもなお、「その先の限界」がある。持続性心房細動では、肺静脈隔離に加えて様々なアブレーション戦略が考案されたにも関わらず、いまだ決定打に欠くことはその限界の一つに挙げられる。また、LV summit起源の心室期外収縮や、瘢痕関連心室頻拍におけるIntramural scarでは、焼灼巣が標的に到達しないという限界がある。発作性上室頻拍でも、房室結節リエントリー性頻拍の新しい概念や特殊な副伝導路により、頻拍機序の鑑別がより複雑になっている。本シンポジウムでは、アブレーション成熟期における「その先の限界」をテーマとし、現況のオーバービューから、新しい着想に基づいた将来構想まで広く発表を公募したい。
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5. |
弁形成術のための画像診断
―画像診断医と外科医の連携― |
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準備中
※指定演者のみとなりましたので公募はございません |
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6. |
心臓病領域における再生医学の現在地 |
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澤 芳樹 (大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学)
家田 真樹 (筑波大学医学医療系 循環器内科)
2020年に入りiPS細胞を用いた心筋シートの臨床治験1例目が本邦から報告された。心臓再生治療の実用化に向けて大きな一歩である。今後も、多能性幹細胞から作製した心筋細胞移植による心臓再生が国内外から発表されてくることが期待される。iPS細胞はこれまで使用されてきた骨髄や心臓内の体性幹細胞とは異なり、心筋分化効率が高い点で新しい治療効果が期待できる。一方、移植心筋による不整脈や未分化細胞残存による腫瘍化など副作用にも注意を払う必要がある。また現在次世代の再生法としてiPS細胞を経ずに直接心筋を作るダイレクトリプログラミングや心筋細胞の増殖能を活性化し心臓再生する方法などが報告されている。本セッションでは心臓病領域における再生医学の現在地と未来について討議したい。
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7. |
冠動脈PCI治療の進歩 |
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尾崎 行男(藤田医科大学 循環器内科)
伊刈 裕二(東海大学医学部内科学系 循環器内科学)
近年、食生活や生活習慣の欧米化に伴い虚血性心疾患は急増し、この治療法として1977年にグリュンチッヒらにより始められたバルーンによるPCIは急性冠症候群(ACS)を始め一定の効果があるものの、冠動脈解離による急性冠閉塞が問題となり、これを克服するため金属ステント(BMS)が開発された。しかしBMSにも再狭窄という問題が発生し、これに対し薬剤溶出性ステント(DES)が開発された。一方、BMSと同じ頃に開発された血管内エコー(IVUS)は、その後の光干渉断層像(OCT)や冠血流予備量比(FFR)などの進化と共に冠動脈イメージングガイドPCIの有用性にも注目が集まっている。さらに最近ではCTを用いたFFRにも注目が集まっている。また実臨床ではfemoralよりradial approachさらにdistal radial approachも用いられ、IKARIカテも同時に普及している。今回広くPCIの進歩に関する演題を応募したい。
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8. |
血管炎の鑑別診断と治療 |
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磯部 光章 (公財)日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院)
石坂 信和 (大阪医科大学 内科学III)
血管炎は大型血管炎、中小型血管炎に分けられ、他に特殊な血管炎が含まれる多彩な疾患である。循環器領域で遭遇し問題となるのは高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、川崎病、ベーチェット病などである。最近本邦から発信されたIgG4関連血管炎も着目されている。これらの疾患は循環器内科や心臓血管外科で診療する機会が多い。いずれも診断面では特異的なバイオマーカーが存在していないことから、臨床所見と非特異的な炎症マーカーと画像診断に頼らざるを得ないのが現状である。画像診断が大きく進歩しており、大型血管炎ではFDG-PETの有用性が認識され普及しているが、判定基準の標準化が大きな課題となっている。治療面では従来の免疫抑制剤に加えて、トシリズマブはじめ様々な免疫抑制剤の有効性が示されているが、無効例も少なくない。血管狭窄・拡大や大動脈閉鎖不全の治療においては血管内治療の可否、手術の時期なども大きな課題にとどまっている。川崎病においては小児科から成人期への移行医療も大きな問題となっている。このように病態解明、診断、治療面で様々な課題があり、今後の研究が待たれる疾患群である。本セッションでは広く血管炎の基礎研究、診断・治療面での最新情報と研究成果を持ち寄り総合的な討議を行いたい。
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シンポジウム
【徹底討論】 |
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9. |
physical examinationの必要性を考える |
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増山 理 (JCHO星ヶ丘医療センタ- 循環器内科)
室生 卓 ((医)倫生会みどり病院 心臓弁膜症センター内科)
今さら言うまでもなく医療技術の進歩は著しく各種画像診断や血液検査を駆使することによって循環器疾患の病態診断、重症度診断が可能である。そのような現代医療の中にあってphysical examinationは果たすべき役割があるのだろうか、というのが本セッションのポイントであろう。もちろん、初診の患者にいきなりCT,MRIを施行することはナンセンスでまず問診やphysical examinationを行うべきであることは今も昔も変わりはない。また、心不全の患者をフォローする際に毎日心エコーをするわけにもいかないからそれに代わる手段としてphysical examinationがあるのも確かである。それではphysical examinationは安価で、簡便な手段としての価値しかないのであろうか。私の答えはNoである。physical examinationはどんな画像診断よりも精度の高い診断能を有する場面が多々ある。頸静脈圧の評価や収縮性心膜炎や心タンポナーデの診断はよい例と思われる。また、弁膜症の患者の重症度診断は心エコーの定量的な評価により可能であるが、physical examinationを抜きになされたその評価はしばしば疑わしい。本セッションでは画像診断万能の現代におけるphysical examinationについておおいにディスカッションできれば幸いである。
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10. |
大規模臨床試験から考察するPCIの未来像 |
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木村 剛 (京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
門田 一繁 (倉敷中央病院 循環器内科)
今回、第68回心臓病学会学術集会シンポジウムにおいて「大規模臨床試験から考察するPCIの未来像」というテーマをいただきました。
Interventional Cardiology は循環器領域の中でも大規模臨床試験により最も多くのエビデンスが創出されている領域の一つであり、蓄積されたエビデンスを基に診療が非常に早いペースで変化している領域です。
PCIの未来像を決定する重要なテーマとしては、現在、PCIの適応、PCI/CABG の棲みわけ、PCI後の抗血栓療法、至適PCI手技、PCIにまつわる諸問題(Access site、Ad-hoc PCI、Staged PCI、Complete revascularization、Scheduled Follow-up angiographyなど)などが挙げられようかと思います。
これらのテーマについてこれまでの大規模臨床試験を総括し、エビデンスをどのように診療に活かしプラクティスを変えて行くか、またそこに実際の診療で得られた経験をどのように取入れていくかを徹底討論したいと思います。
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11. |
TAVIの適応拡大について検証する
―low risk ASへの適応拡大は妥当か?― |
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上妻 謙 (帝京大学医学部 循環器内科)
新家 俊郎 (昭和大学医学部 循環器内科)
TAVIが本邦に導入され6年が経過したが、術前評価の手法もほぼ確立し、標準治療としての地位が築かれたと言える。欧米のガイドラインでは既に中等度手術リスク患者に適応が拡大し、さらに低リスク患者へと適応が広がろうとしている。周術期の低侵襲性だけでなく、外科的大動脈弁置換術に対してその優位性を治療後長期にわたって維持できるのか?最先端のエビデンスと知識に基づき議論するセッションとしたい。最新の知見を発表して頂ける先生を広く募集させて頂きます。
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12. |
心房細動に対するリズムコントロール:
カテーテルアブレーション vs 外科的メイズ手術 |
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新田 隆 (日本医科大学大学院医学研究科 心臓血管外科学 心臓血管外科)
栗田 隆志 (近畿大学医学部 心臓血管センター)
心房細動に対するリズムコントロールは、動悸などの自覚症状の改善と心房収縮の回復による心機能の改善、そして脳梗塞などの血栓塞栓症の予防による生命予後の改善も期待される。器質的心疾患を伴わない心房細動に対するカテーテルアブレーションは技術の向上、新規デバイスやエネルギー源の導入に伴って、その適応は発作性心房細動から持続性心房細動へ拡大し、成功率も向上している。メイズ手術は1987年にCoxらにより開発された心房細動に対する最初のリズムコントロール治療である。主に器質的心疾患に合併した心房細動に対して他の心臓手術に合併して行われ、術後の自覚症状の改善だけでなく、脳梗塞の予防効果と術後中長期の生命予後改善が示されている。器質的心疾患を伴わない心房細動に対しては胸腔鏡を用いた低侵襲手術が行われている。
洞調律復帰率だけでなく、脳梗塞の回避や生命予後に及ぼす効果も含めて、両治療法を徹底討論する。
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13. |
内科医と外科医が考えるMitraClipのメリット、デメリット |
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夜久 均 (京都府立医科大学大学院医学研究科 心臓血管外科学)
林田 健太郎 (慶應義塾大学医学部 循環器内科)
MitraClipは僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対するカテーテル治療として、2003年より臨床応用されてからこれまで世界中で10万人以上が治療を受けている。本邦でも2015年より治験が行われ、2018年より保険償還されて以降、全国に普及しつつある。しかしこの治療の最も効果のあるコホートについて、また適切な適応につき我々が知っておくことは重要である。2018年には機能性MRに対するMitraClipと保存的治療を比較するRCTの結果が発表され、よりMItraClipにより恩恵を受けられる患者像に対する理解が深まっている。器質性MRについてもMitraCip不適な解剖が存在することも事実であり、すでに確立されている外科治療とどのように組み合わせていくかも重要なポイントである。本セッションではMRに対する治療オプションとして、外科治療に加えMitraClipをどのように使用していくかを論じていきたい。
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14. |
HFpEFのサブタイプを探索する
―可能性のある治療アプローチとは?― |
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室原 豊明 (名古屋大学医学部 循環器内科)
土肥 薫 (三重大学医学部附属病院 循環器内科)
駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の有病率は年々増加しているが、エビデンスに基づいた治療法が十分にアップデートされておらず、大きな課題となっている。HFpEFの発症・進展には、加齢のみならず、高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病など生活習慣病に起因した血圧調節機能や内皮機能の障害、腎臓でのナトリウムハンドリング障害などが大きく関わり、左室駆出率が低下した心不全に対して有効である心筋リモデリング抑制を主軸においた治療戦略では予後の改善は認められない。また、HFpEFの主病態の一つとされる拡張能障害の機序や病態進展との関連性についても未だ十分には解明されていないため、治療戦略に十分結びついていない。本セッションでは、基礎疾患や病態修飾因子が多彩かつ不均一なHFpEFの病態を、適切にサブタイプ分類することで今一度整理し、治療ターゲットを正しく探っていく足掛かりとなるよう、本領域のエキスパートのみならず多方面から演者を募り、深く討論する場としたい。
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15. |
左心耳閉鎖デバイスと胸腔鏡下左心耳切除術、いずれを選ぶべきか? |
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森野 禎浩 (岩手医科大学 内科学講座 循環器内科学)
大塚 俊哉 (多摩総合医療センタ- 心臓血管外科)
左心耳マネジメントの目的は抗凝固療法が危険な患者から治療を速やかに離脱させることである。血栓塞栓リスクが高い左心耳(大きい、複雑な形状、異常な血流停滞など)はそのニーズも高い。本邦でも経皮的左心耳閉鎖術が始まり、様々な経験を積んでいるところである。それに対し、外科的左心耳切除術は廉価なステープラを使用して大きさや形に関係なくすべての左心耳を瞬時にほぼ無血で切離し平坦化できる。胸腔鏡テクニックは手術時間を大幅に短縮し(30分以内)日帰り手術も可能になる。内皮化の心配をする必要もなく速やかな抗凝固離脱が可能で抗血小板剤は不要である。
今回の徹底討論は、単純な外科・内科の棲み分け論ではなく“左心耳マネジメントを最も必要とする患者が信頼して選べる価値の高い方法とは?”という本質的な論点で行われることを期待する。
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16. |
いま問い直す心臓弁膜症評価
―何を重度の基準とすべきなのか― |
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竹内 正明 (産業医科大学 臨床検査・輸血部)
大門 雅夫 (東京大学医学部附属病院 検査部・循環器内科学)
弁膜症は、超高齢社会の訪れと共に増加し続けている。一方で、様々な低侵襲治療の進歩や周術期安全管理の向上により、侵襲的治療の対象となる症例も広がっている。弁膜症の治療方針を決める上で最も重要なのは重症度である。重症度は、もともと疾患ごとの自然歴を考慮して決められ、様々なガイドラインに基準が示されている。一方で、それぞれの弁膜症の病態は時代と共に変化しており、中等度でも侵襲的治療を考慮すべき例が存在するなど、必ずしも重症度基準と臨床的重症度が一致しないことがある。ここでは、現代に多い大動脈弁狭窄、僧帽弁逆流、三尖弁逆流の3つの弁膜症の重症度評価基準について演題を公募し、改めてその重症度評価の妥当性を議論する。
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17. |
その患者さん、本当にDCM? |
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斎藤 能彦 (奈良県立医科大学 循環器)
北岡 裕章 (高知大学医学部 老年病・循環器内科学)
心筋症は、“ 心機能障害を伴う心筋疾患”と定義される。心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)では、最終的に心筋症と診断するためには、家族歴・遺伝子変異に関する検討と二次性心筋症の鑑別が必要としている。拡張型心筋症は、HFrEFの代表的な原因疾患である。本邦の心移植の最も多い原因疾患であるが、様々な原因が拡張型心筋症様の病態を呈し、一部は予後や治療法が異なるため、その鑑別が重要である。本シンポジウムでは、症例提示から、二次性心筋症の鑑別に至るポイントを議論したい。
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18. |
心臓再同期療法(CRT)の導入と至適化
―指標として重視すべきは何か?― |
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石川 利之 (横浜市立大学附属病院 循環器内科)
田邊 一明 (島根大学医学部 循環器内科)
CRTは、薬物治療抵抗性のNYHA心機能分類III度またはIV度の重症心不全で、LVEF≦35%、洞調律、QRS幅が120ミリ秒以上の症例がクラスⅠで推奨されている.一方で、CRTの植込みを行っても、その3~4割の患者がCRTの効果が十分でない、いわゆる“ノンレスポンダー”となることが判明している.QRS波形に関するメタ解析では左脚ブロック波形の患者でのみCRTの有用性が示されており、心エコー法で検出されたdyssynchronyが必ずしもCRTの効果に結びついていない。一方、個々の症例の分析することで大規模研究からは得られない情報を明らかにできる可能性がある。本シンポジウムでは、個々の症例を検討する事で、有効なCRT治療を実現するCRT適応決定と至適化の指標を探りたい。
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19. |
高齢者心不全の治療
―何を目標に、どの順番で治療すべきか?― |
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伊藤 正明 (三重大学大学院医学系研究科 循環器・腎臓内科学)
筒井 裕之 (九州大学大学院医学研究院 循環器内科学)
高齢心不全患者の臨床像は多様であり,治療の目標も経カテーテル大動脈弁留置術等のように「心不全の根治」から薬物治療を中心とした「急性増悪の予防」と症例毎により異なる。これらの多様性から,ガイドラインは,高齢心不全患者の診断および治療に関してエビデンスに基づいた指針を提示できていない。また,高齢心不全患者では,体重,食事,服薬の自己管理が困難な患者も多く,適切な活動量を設定し指導することが困難な場合も多い。本セッションでは,高齢心不全患者の心不全治療を行ううえでの注目すべき患者背景(病態, 体液量,ADL,認知機能,等)や治療目標,治療順序について検討し,新たな治療指針の作成の一助になることを目標とする。
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20. |
左主幹部・多枝病変の血行再建はPCIかCABGか? |
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小林 順二郎 (国立研究開発法人 国立循環器病研究センター)
中村 正人 (東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
左主幹部、3枝病変に対する血行再建の基本的な考え方は最新の血行再建ガイドラインに示された。しかし、実臨床においてガイドラインに合致する症例は30%程度にとどまるといわれている。ガイドラインの推奨に沿った運用ですべてをカバーすることは困難である。病変枝数以外に病変形態、患者背景、治療の目的、予後、服薬アドヒアランスなど多くの要因を考慮しなくてはならないからである。これらをすべて包含した長期の予後指標は本邦にはなく、個々の経験や、海外からの報告を参考にしているのが現状であろう。そこで、今回、各施設においてどのようにガイドラインを運用しているか、またその成績をどのように評価しているか議論したい。
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21. |
静脈血栓塞栓症の診断と治療
―ガイドライン改定を踏まえたポイントとは?― |
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山田 典一 (地方独立行政法人桑名市総合医療センター 循環器内科)
中村 一文 (岡山大学大学院 循環器内科学)
静脈血栓塞栓症(VTE)はわが国でも増加しており、日常臨床でも遭遇する機会が増えている。VTEに対する各種検査法の診断能向上や直接作用型経口抗凝固薬の導入、血栓溶解療法や下大静脈フィルターに関する大規模臨床試験の結果などを反映し、2018年に日本循環器学会VTEガイドラインが改訂され、VTEの診断や治療は大きく変化した。本シンポジウムでは、ガイドラインの改訂ポイントを踏まえ、診断や治療に難渋したVTE症例などを提示したうえで、臨床現場で感じている疑問や問題点について議論を深めることで、今後のVTEに対する適正な診療につなげていきたいと考えている。
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22. |
難治性高血圧:原因検索をどのように行うべきか? |
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苅尾 七臣 (自治医科大学 循環器内科学)
大石 充 (鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学)
治療抵抗性高血圧は、通常、利尿薬を含む降圧薬3剤で治療中にもかかわらず、血圧コントロールが不良の高血圧と定義され、高血圧患者全体における頻度は約15%以上に及ぶ。心不全や動脈硬化性循環器疾患の1次予防と2次予防において、血圧コントロールは極めて重要であり、JSH2019ガイドラインにおいても降圧目標値が130/80 mmHg未満に下げられている。この確実な降圧目標の達成のためには、昇圧原因の検索と機序に基づく治療が極めて重要となる。本シンポジウムでは、ケースカンファランスを通じて、難治性高血圧の原因検索と治療の具体的プロセスに焦点を当てる。奮って貴重な症例提示とディスカッションをお願いしたい。
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23. |
心疾患合併ハイリスク妊娠の管理 |
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市田 蕗子 (国際医療福祉大学臨床医学研究センタ-山王病院 小児科)
長谷部 直幸 (旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学分野)
心疾患を有する妊娠可能な女性の数は年々増加し、しかも、重症心疾患であっても挙児希望が強く、ハイリスク妊娠に対応する必要性が急速に高まっている。Fallot 四徴症患者の妊娠・出産管理はもちろんのこと、Fontan 術後患者の妊娠・出産管理は多くの施設で喫緊の課題である。また、新生児医療の進歩に伴い、妊娠後期の母体循環への負荷のため合併症が予想される場合には、妊娠を中断して分娩に移行することも可能になっている。さらに肺動脈性肺高血圧、抗凝固療法、不妊治療などにおいても目覚ましい進歩があり、妊娠・出産管理における治療の選択肢も増えている。 このシンポジウムにおいては、個々のケースにふさわしい最良の治療方針を討論する場としたい。
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24. |
病理からみた心臓病学 |
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中澤 学 (近畿大学医学部 循環器内科学)
池田 善彦 (国立研究開発法人 国立循環器病研究センタ- 病理部)
心臓の病理診断は臨床的に得られる種々の電気的、血行力学的データと対比することによって、さらなる理解を深め、臨床データも病理学的裏付けがあってこそ確立される。画像診断が発達した最近では、心臓内部の形態に加え“動態”や“代謝”を含めた情報として詳しく捉えられるようになってきたが、臨床と病理との間には共通点と相違点が微妙に絡み合っている。剖検による病理診断が、従来最終診断としての重みを維持し得たのは、その検索に誤りがないとする無謬性に対する信頼が大きい。したがって、臨床医学が進むにつれ病理学的視点という基本に立ち戻る作業は、画像診断や治療手技の精度を保つ上で今後も重要となってくると思われる。本シンポジウムでは、臨床と病理との狭間にある病態に関して、個々の症例提示から議論を深めたい。
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パネルディスカッション |
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医療偏在にともなう問題点を考える
―遠隔医療・遠隔診療が拓く可能性とは― |
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三浦 哲嗣 (札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学)
渡辺 昌文 (山形大学医学部 内科学第一講座)
日本は人口減少と高齢化の時代を迎えている。特に地方では、高齢者を中心に循環器疾患を抱える患者が増加し、かつ広域に低密度で居住している。さらに、医療偏在は、地方における医療資源の不足や、基幹病院への集中を促しており、患者にとって医療機関へのアクセスは大きな負担となっている。この解決策として、遠隔医療や遠隔診療に期待が集まっている。例えば、心不全患者は、頻回の医療機関受診が入院回数を減らすとされているが、遠隔医療が代替にならないか。また、緊急の急性循環器疾患では、遠隔診療により治療開始までの時間を短縮できないかなどが考えられる。本シンポジウムでは、遠隔医療・遠隔診療の可能性を探り、有効な方法として全国で普及できるよう、皆様とdiscussionしたい。
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チーム医療
セッション |
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1. |
重症心不全にチーム医療で立ち向かう、難治性心不全に対する
高度医療実施後のハートチームの役割とは? |
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肥後 太基 (九州大学大学院医学研究院 循環器内科学)
日高 貴之 (広島大学大学院医系科学研究科 循環器内科学)
現在、難治性心不全患者へ対して、心臓移植、機械的循環補助、経皮的な弁膜症治療などの高度医療が実施可能となっており、今後、これらの治療をうける患者が増加していくと考えられる。これらの治療の有効性は広く認められているが、治療後、心不全が根治しあらゆる治療から開放される患者は皆無と言っても過言ではなく、多くの症例において、心不全管理の継続が必要とされる。高度な専門性を必要とするこれらの治療の、前段階から治療実施においては、ハートチームの重要性が認識され、役割が明確化されているが、治療後の、ハートチームに必要とされる役割や関わり方、それらを果たすために必要な知識やスキルについて十分な議論がなされていない。
本セッションでは、各治療において経験豊富な施設より、治療後介入後のハートチームによる関わり方について提言を頂き、議論を行たい。
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2. |
構造的心疾患にチーム医療で立ち向かう |
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坂本 知浩 (済生会熊本病院心臓血管センター 循環器内科)
福田 幸弘 (広島大学病院 循環器内科)
本邦では高齢化率の増加が著しい一方で,各種治療デバイスの進化もめざましく、治療を必要とする(あるいは治療が可能な)構造的心疾患を有する心不全患者が増加している。脳卒中・循環器病克服5か年計画では、「チーム医療」によるシームレスな心不全治療管理の重要性が示され、多くの医療機関で実践されている。また、大動脈弁狭窄症や僧帽弁逆流などに対するデバイス治療以外に,左心耳閉鎖術や卵円孔閉鎖術が開始となり、従来の「ハートチーム」のみならず「ブレイン・ハートチーム」が活動を開始している。TAVI治療が我が国で開始となり7年が経過し、「チーム医療」や「ハートチーム」による診療が、実際の臨床現場でどのように行われているかの検証が必要な時期にきている。本セッションでは、構造的心疾患にチーム医療で立ち向かう際の「成功の鍵や陥りやすい盲点」について議論を深めたい。
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3. |
脳卒中に対するチーム医療
―循環器内科医がいかに関わるべきか― |
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富田 泰史 (弘前大学大学院医学研究科 循環器腎臓内科学講座)
宮坂 陽子 (関西医科大学 第二内科)
脳卒中の発症には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が深く関与しており、これらは虚血性心疾患をはじめとする循環器疾患の発症にも密接に関連している。動脈硬化を基盤とした血管病の観点からは脳卒中と循環器疾患は共通のリスクを有しているといえる。脳血管と冠動脈いずれにも狭窄病変を有する症例も少なくない。さらに塞栓タイプの脳梗塞では塞栓源検索のために経食道心エコー検査は必須であり、また無症候性心房細動の検出が必要とされることもあろう。心原性脳塞栓症の予防のために心房細動カテーテルアブレーションが実施されることも多い。しかし実臨床の現場では、脳卒中患者の診療に循環器内科医は個別に関わることが多く、チームとして関与する機会はそれほど多くはないのではなかろうか?本セッションでは、脳卒中患者に対するチーム医療の一員として循環器内科医はどのように関わるべきなのか、今後の展望を交えて議論したい。
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4. |
がん症例に対するチーム医療
―循環器内科医がいかに関わるべきか― |
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向井 幹夫 (大阪国際がんセンター 成人病ドック科)
赤澤 宏 (東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
がん診療において腫瘍医と循環器医の連携による対応(Continuum of Cardiovascular Care)が求められている。腫瘍医は心血管毒性を考慮に入れた上で治療を施行し、循環器医は心血管毒性の発症予防並びに早期治療を行うことでがん治療が適正化される。循環器医が最新のがん治療における情報を全て理解することは決して容易ではないが、腫瘍医と共に外来化学療法室の看護師や薬剤師などとチームを組み、情報を共有しつつ心血管毒性へ積極的に対応することは、がん患者の安全かつ適正な治療の実現のために必須である。このセッションでは、がん診療に携わる先生に現状と循環器医へ期待を含め議論していただく。
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5. |
下肢虚血に対するチーム医療(フットケアチーム) |
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的場 聖明 (京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科)
飯田 修 (関西労災病院 内科)
高齢化、糖尿病及び慢性腎臓病の増加に伴い、慢性下肢虚血(CLTI: chronic limb-threatening ischaemia)は全世界的に増加傾向である。本邦は諸外国と異なり、高齢CLTI、慢性維持透析を併発したCLTI、複数の併存疾患を有するCLTIが実臨床には多く存在し、治療適応から戦略決定に至るまで医療従事者を悩ますことは少ない。そのような背景において、CLTI治療を各スペシャリストが協力して行うチーム医療の重要性は言うまでもない。今回本セッションを通し、最新のガイドラインから得られる知見から日本の実臨床問題点まで、時間を許す限り幅広くこの議題に対して話し合い、最終的にはCLTIに対する集学的治療に関する理想のチーム医療の在り方について各演者と考えたい。
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6. |
高齢者心不全に対する多角的・多職種的介入の実際 |
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弓野 大 (医療法人社団ゆみの)
小板橋 紀通 (群馬大学医学部附属病院 循環器内科)
高齢者心不全の予後を改善させるエビデンスのある治療薬は存在せず、そもそも「高齢者の予後」とは何なのかがあいまいな中、我々はケースバイケースでベストな治療を模索している。最大限の治療が最善の治療ではない場合がほとんどで、循環器内科医だけでは解決できないことの方が多く、多角的・多職種的介入が不可欠である。そのプロセスとアウトカム評価は各医療機関ごとで異なるであろうが、実際の「現場の試み」を提示し、各参加者が自施設の明日からの診療の質の向上に役立てることができるようなチーム医療セッションになれば幸いである。
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メディカル
スタッフ
セッション |
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1. |
カテーテル/CT/MRI |
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船橋 伸禎 (千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学)
小松 誠 (大阪暁明館病院 循環器内科 心臓血管病センター)
現在の医療において、各職種領域の進歩ともに様々な新しい取り組みがなされていると思いますが、専門性が高まるにつれて他領域の方々がご存じない内容になっているかもしれません。本総会のメインテーマであるOne-Stop Cardiologyとは、自身の専門領域にとどまらず幅広く循環器病学を学ぶことです。このセッションでは、カテーテル、CT、MRIに携わるメディカルスタッフ(看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学士、栄養士等)の方々が、同領域でそれぞれの立場から施行されている新しい取り組みを発表していただきます。そしてその内容を、医師を含めたメディカルスタッフ間で活発に議論、共有して、明日からの診療に活かしていただければ幸いです。
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2. |
エコー |
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坂田 好美 (杏林大学医学部付属病院 第二内科)
村田 光繁 (東海大学医学部付属八王子病院 臨床検査学)
近年、多職種ハートチームによる心血管疾患の診療の重要性が認識されている。循環器診療におけるハートチームは、医師、看護師、薬剤師、理学療養士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどで構成されるが、心エコー図検査においては検査技師(ソノグラファー)の参加も不可欠である。一般的な経胸壁心エコー図の検査診断のみでなく、経食道心エコー図、負荷心エコー図においては、検査技師・看護師が参加することにより安全に検査が施行でき、また、カテーテル治療を行うstructure heart diseaseの患者や心不全患者の診療には、多職種ハートチームと医師が連携し、心エコー図検査の結果により心機能障害の適切な評価を行い、その後の治療や管理、心臓リハビリテーションに反映することにより、患者の予後を改善することが可能となる。心エコー図検査への多職種ハートチームの参加の有用性、心エコー図の結果をどのように循環器診療に活用するかの取り組みについて討論する。医師、検査技師、看護師、理学療養士それぞれの立場での演題を応募する。
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3. |
地域連携をどのように推進していくか、これからの看護の可能性 |
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吉田 俊子 (聖路加国際大学 看護学部)
池亀 俊美 (日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 看護部)
循環器疾患の継続した介入には、施設ケアと在宅ケアとの連携や、地域ぐるみの生活を視野に入れた包括医療としての視点が重要である。さらに、疾患の特徴を踏まえ、意思決定能力が低下する前に,患者や家族が望む治療と生き方を医療者が共有する、アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning; ACP)を地域と連携して早期より行っていくことが求められている。
「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」の制定を受け、これからの地域連携に看護職がどのように取り組んでいくべきか、今後の看護の可能性を考える場としたい。
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4. |
働きかた改革時代の心臓リハビリテーションの質向上の取り組み |
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高橋 哲也 (順天堂大学 保健医療学部)
衣笠 良治 (鳥取大学医学部附属病院 循環器科)
心臓リハビリテーションは、多職種チームが協調して実践する長期にわたる多面的・包括的プログラムである。リハビリテーションに関わり、患者の回復を支援することは大変やりがいのある仕事である一方で、患者の行動変容や運動療法の効果が明らかになるまでには時間がかかることもあり、忍耐と根気のいる仕事でもある。チーム医療が理想であるものの、職種間の考え方の違いから連携は難しく、理想と現実との狭間で悩むチームも少なくないと聞く。さらに、診療記録や患者申し送り、カンファレンス等の診療以外の時間も多く、医療従事者の疲弊を招いている。
働き方改革時代を迎え、心臓リハビリテーションにおいても、合理的でかつ生産性の高い仕事のしかたを議論する時期に来た。本セッションでは、各施設で最小限の労力で最大の結果をだすための工夫、取り組みを紹介いただき、働き方改革時代の心臓リハビリテーションのベストプラクティスについて議論したい。
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5. |
多職種介入・地域連携 |
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義久 精臣 (福島県立医科大学附属病院 循環器内科、心臓病先進治療学講座)
三好 亨 (岡山大学病院 循環器内科)
本セッションのメインテーマは『連携』である。心不全、冠動脈疾患、肺高血圧、不整脈、高血圧など様々な心臓病の診療現場では、患者数の増加や高齢化に伴い、病診連携や多職種連携による多面的な介入の重要性は年々増している。地域において、かかりつけ医、往診施設、基幹病院、特定機能病院間の病診連携が必要であり、各施設内においては、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・臨床心理士・管理栄養士・臨床検査技師・臨床工学技士・社会福祉士など疾病管理に関わる専門家集団がそれぞれの立場からサービス提供を行う。
実例として、かかりつけ医と基幹病院を中心に、心不全、冠動脈疾患、心房細動などの連携パスや手帳などを用いた連携や症例検討会も実践されつつある。かかりつけ医においては、心不全のスクリーニングや管理などが求められており、心不全症状、BNP、服薬内容などの疾患情報を基幹病院と共有するなどの取り組みも行われている。また、基幹病院においても、冠動脈疾患、大動脈弁狭窄症や心不全などの治療に際して、循環器内科医、心臓血管技師、看護師、検査技師など多職種から構成されるハートチームにてSAVR、TAVRなどの治療方針の決定が求められている。さらに、心不全を中心に心臓病領域における緩和ケアの普及・充足も喫緊の課題であり、患者家族の人生観や倫理的問題も加味した包括的な多職種介入が求められている。本セッションでは、多くの職種やご施設の方から、施設内あるいは施設外を含めた『多職種連携・地域連携』の取り組みや問題点に関して、提示頂き、今後の連携について模索していきたい。
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