西部 俊哉 | (東京医科大学 心臓血管外科) |
木村 剛 | (京都大学大学院医学研究科・医学部循環器内科学) |
大動脈ステントグラフト内挿術は、1991年にアルゼンチンのParodiらが腹部大動脈瘤に対して、次いで1994年に米国のDakeらが胸部大動脈瘤に対して臨床例を報告して以来、人工血管置換術に代わる新しい低侵襲的治療法として広く普及してきた。わが国では自作ステントグラフトの時代が長く続いたが、2006年7月に腹部大動脈用の企業製ステントグラフトが厚生労働省より承認され、2008年2月に胸部大動脈用の企業製ステントグラフトが承認された。2014年12月現在、腹部は5種類(Zenith、Excluder、Powerlink、Endurant、 Aorfix)、胸部も5種類(TAG、TX2、Valiant、Najuta、Relay)が市販されるに至っている。また、日本ステントグラフト実施基準管理委員会によれば、腹部は41,172人(2008年7月〜2014年12月)、胸部は15,802人(2010年1月〜2014年12月)にステントグラフト内挿術が行われた。しかし、過去約20年にわたるステントグラフト内挿術の歴史にも関わらず、まだまだ未解決の問題が存在している。すなわち、エンドリークの対策、ステントグラフトの耐久性、解剖学適応外の症例に対する応用などの解決が求められている。本シンポジウムではこれまでの大動脈ステントグラフトの治療成績を振り返り、今後の方向性・展望について議論したい。