シンポジウム10

遺伝性心疾患の遺伝子診断を日常診療にどう生かすか

清水 渉(日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科分野)
藤野 陽(金沢大学 循環器内科)

1990年代からの分子遺伝学的研究の進歩により、遺伝性心疾患が各種遺伝子の変異によって発症することが解明されてきた。特に、先天性および後天性QT延長症候群(LQTS)、ブルガダ症候群・早期再分極症候群、カテコラミン誘発多形性心室頻拍などの遺伝性不整脈においては、心筋イオンチャネル機能や細胞膜蛋白の調節に関係する遺伝子の変異が原因として同定され、分子レベルでの病態解明・治療法の開発も進みつつある。同じく、肥大型心筋症や拡張型心筋症などの遺伝性心筋疾患においても、心筋サルコメア蛋白をはじめとする構造蛋白の遺伝子変異が病因であることが判明し、遺伝子型と疾患の発症・進展(臨床病型)との関連についての研究が進行している。それらの中で先天性LQTSの遺伝子診断率は50〜70%と高く、既に10を超える原因遺伝子が同定され、遺伝子型特異的な治療や生活指導が実施されていることから、保険診療が承認されている。一方で、従来の遺伝子解析の手法には処理能力の限界があり、遺伝性心疾患全般においては、遺伝子解析の結果が日常診療に充分には還元されていないという課題も残されている。本シンポジウムでは、これら遺伝性心疾患の遺伝子診断に焦点をあて、最新の知見を発表していただき、遺伝子診断を日常診療に生かしていくための新たな展開を論議したい。