長谷部 直幸 | (旭川医科大学内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野) |
上嶋 健治 | (京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センターEBM推進部) |
疾患の危険因子の探究を目的として疫学研究が始まったが、その先駆は1948年に始まったフラミンガム研究である。当時の米国では心筋梗塞をいかに克服するかが循環器疾患の最大の課題であり、フラミンガム研究によって高血圧、高コレステロール血症、喫煙が心筋梗塞の3大危険因子であることが判明した。フラミンガム研究以後、世界中で多くのコホート研究が立ち上がり、我が国でも脳卒中の解明を目指して久山町研究が1961年に開始された。疫学研究で危険因子が解明されると次の課題はその危険因子に介入して循環器疾患を予防することである。予防できて初めて真の危険因子であることが実証される。最初に予防効果を立証したのは1967年に発表されたVA研究であり、降圧治療により循環器疾患を予防できることを世界で最初に実証した歴史的なRCTとなった。こうして疫学研究で提唱された危険因子をもとに、対象や治療薬に焦点を絞った様々な臨床研究(生活習慣の改善、薬物治療、非薬物治療を含む)が行われ、その成果から、適切な治療目標や個別の病態への治療法の適応等が明らかにされてきた。本邦では久山町研究以後、様々な疫学研究がなされており、それらの統合研究もなされている。本シンポジウムでは、疫学研究の重要性を明らかにし、本邦で行われてきた疫学研究、観察研究を紹介していただいた上で、本邦の循環器予防の問題点を明確にし、今後行うべき疫学研究、臨床研究のあり方を討論したい。