シンポジウム6

Beyond DESの現状と可能性

田邉 健吾(三井記念病院循環器内科)
尾崎 行男(藤田保健衛生大学循環器内科)

薬剤溶出性金属ステント(DES)は、従来の金属ステント(BMS)の課題であった再狭窄を克服し得る画期的な冠動脈治療デバイスとして急速に普及したが、2006年頃より遅発性血栓症(ST)等の新たな問題点を露呈することとなった。新世代のDESには生体親和性あるいは吸収性のポリマーが使用され、第1世代のCypher/Taxusステントと比較しMIやSTのリスクを有意に減少させることが近年明らかとなったが、恒久的に冠動脈内に金属ステントによる「caging」が残存する限り、ステント留置箇所における適切なずり応力(wall shear stress)や血管運動(vasomotion)の消失など冠動脈壁への生理学的悪影響、および遠隔期におけるNeoatherosclerosisやSTのリスクを克服することは困難と考えられる。
一方でステント自体が自然吸収される、いわゆる生体吸収性ステント(スキャフォールド)(BRS)の概念は1980年代に提唱されたが、その開発は困難を極め、90年代後半にようやくヒト冠動脈で使用されるまでに技術的進化を遂げた(Igaki-Tamai stent)。現在では欧州を中心に高分子化合物(ポリ乳酸、PLA)で構成されるBRSが実際に臨床で使用されている。特にエベロリムス溶出性を併せ持つPLA scaffold(Absorb BVS)は2006年よりFirst-in-man studyがThoraxcenter(Rotterdam)を中心に行われた。ABSORB trial Cohort AおよびCohort Bではともに良好な臨床成績が報告され、ABSORB IIではXIENCEステントとの直接比較で同等の1年の成績が示された。今後はイメージングガイド下でのBVS使用やスキャフォールド血栓症のリスクをいかに抑えるかが議論となろう。本セッションではこれらの現状も踏まえ、議論を深めたい。