下川 宏明 | (東北大学大学院医学系研究科循環器内科学) |
苅尾 七臣 | (自治医科大学循環器内科) |
近年、我が国では3回の大きな震災が発生している。これまでの大震災時には医療従事者をはじめとして多くのボランティアが現地に入り、現地の急性期医療を支えた。その際の診療活動や調査研究から、そのたびごとに新たなエビデンスが加わり、災害時には多彩な循環器疾患が増加し、その発生には特徴があることがわかってきた。阪神淡路大震災時には心筋梗塞、突然死、脳卒中が増加し、そのリスクには血圧上昇(災害高血圧)と血栓傾向が寄与することが明らかにされている。新潟中越地震では、実際に血栓傾向を反映した無症候性静脈血栓症が下肢遠位部ひらめ筋部位に高頻度に検出され、症候性の肺塞栓症やたこつぼ心筋症の発生も増加することが報告された。今回の東日本大震災では、より広範囲かつ長期的にわたる調査が実施され、これまでのエビデンスがより定量的に検証されたことに加え、感染性心内膜炎や心不全の発生も増大することが新たに明らかにされた。東日本大震災から4年が過ぎた現在、本シンポジウムは、今回の震災で新たに明らかにされたエビデンスを加え、これまでのエビデンスを定量的に評価・解釈し、災害時における急性期から慢性期にかけての循環器疾患の予防と管理をどのように行ってゆけばよいかを考えたい。