小川 久雄 | (熊本大学大学院 循環器内科学/国立循環器病研究センター) |
湊口 信也 | (岐阜大学大学院医学系研究科 再生医科学循環呼吸病態学) |
急性冠症候群に対する治療の進歩には目を見張るものがある。しかし、最近はその進歩のスピードにもやや陰りが見えている。本シンポジウムでは急性冠症候群に対する治療から予後改善に向けた発表を期待している。急性冠症候群は急性心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性突然死の総称であり、急性心筋梗塞もST上昇型心筋梗塞と非ST上昇型心筋梗塞に分けられる。心筋梗塞の定義も2012年の国際新定義でトロポニンを指標として診断することに統一され浸透してきた。2014年には非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の診療ガイドラインの改訂版も発表された。今後さらに研究が必要な重要分野として多剤併用抗凝固療法、高感度トロポニンの適応、高リスクの高齢者や女性に対するインターベンション治療などに関する勧告も行われている。さらに、発症早期に再灌流が得られない場合を考慮し、左室リモデリングを改善し心不全を予防し、急性冠症候群の長期予後を改善できる新規の最先端治療法を開発する必要がある。新規の最先端治療法としては、薬理学的インターベンション、サイトカイン治療、幹細胞治療、などがあげられる。 これらの方法により、心筋細胞死の防止、心筋再生、血管再生、心臓組織修復などが得られ、左室リモデリングの改善、左室機能の改善がもたらされることが期待される。本シンポジウムでは、さらなる予後改善に向けた急性冠症候群に対する治療の進歩について議論していただく。