シンポジウム1

血管機能評価の現状と課題

野出 孝一(佐賀大学医学部 循環器内科)
東 幸仁(広島大学 原爆放射線医科学研究所/未来医療センター)

1980年に、Furchgott らにより、血管内皮依存性血管拡張物質の存在が提唱されて、血管内皮機能に関する研究がスタートして、約35年が経過した。ヒトにおいて、初めて血管内皮機能が測定されたのが、1986年であり、以降、基礎的、臨床的知見が集積され続けている。動脈硬化は血管内皮障害を第一段階として発症し、進展する。さらに進行すれば心血管合併症を惹起する。糖尿病、高血圧、脂質異常症、加齢、肥満、喫煙、運動不足、塩分の過剰摂取、閉経により血管内皮障害が惹起される。血管内皮機能は心血管病発症の規定因子として、あるいは心血管合併症の独立した予測因子であることが確認されている。血管内皮機能を動脈硬化の治療ターゲットとしても捉えることができる。血管内皮障害は不可逆的なものではなく降圧薬などの薬物療法、補充療法、生活習慣の改善といった適切な介入により改善可能である。従って、血管内皮機能を正確に評価することは臨床上非常に重要である。 現在、いくつかの血管内皮機能測定法が臨床応用されている。新規血管内皮機能測定法も提案されている。測定法には、それぞれメリット、デメリットやピットフォールが存在しており、これらの点を十分に理解しておきたい。本シンポジウムでは、内皮機能測定法の詳細、診断、病態への応用を含めて、今後の展開に関しても、この分野のエキスパートに概説をいただく。