今回の企画の発端は、演者でもある佐藤俊哉先生が国循で話されたp値の講演にある。佐藤先生は何を隠そう（隠してないか）日本計量生物学会国際担当理事であらせられ、アメリカ統計協会が2016年に発表したp値に関する声明を国内に普及するべく活動されている。臨床試験の世界で統計家が医学研究者に口を酸っぱくして説明することのひとつが「統計学的に有意であることと臨床的な意義とは別」という話である。統計家は、以前からずっとこの説明を続けているのだが、残念ながら医学研究者の間に広まったp値信仰は極めて根強く、またそれは洋の東西を問わないことのようで、ついに業を煮やしたアメリカ統計学会が声明を発表したのだろう。アメリカ統計学会の声明には「科学的な結論や、ビジネス、政策における決定は、P値がある値を超えたかどうかにのみ基づくべきではない」という文章があるが、多くの医学研究者にとっては「では、何に基づいて決定すればいいのか」という疑問が浮かぶはずである。今回の企画は、この疑問に答えるものであると、座長は信じている。3名の演者は、いずれもアカデミアに籍をおく生物統計家として、長年医学研究者と共に活動を続けてきた方々なので、その豊富な経験から、皆さんの疑問に応えてくれるだろう。21世紀はdata-drivenの世界である。この企画が生物統計との正しい付き合い方を学ぶ機会になれば幸いである。

昨年、一昨年とも通り一辺倒のエビデンスでは割り切れない複合症例を募集し、そのマネージメントに関して幅広くディスカッションをさせていただきました。今年はさらに複合症例に加えて、「診療科を超えて悩んだような症例」というMulti-disciplinary・Inter-disciplinaryな症例を是非発表いただけましたらうれしく思います。
昨年同様に、「ACS と 心不全」「ACS と 不整脈」「不整脈 と 心不全」「典型的だと思ったら・・・」 という複合症例でのピットフォールでも構いませんが、可能であれば、診療科を超えるような疾患をつけくわえていただければさらに皆さんとの学術的および臨床的経験が増すことと存じます。
例年同様に極めて珍しい例・難治例というよりは、たまに経験するけれどもいつも困るシナリオを提示していただければより参加者にお役立ちできるのではないかと考えています。症例のプレゼンテーションは7-10分程度で、ディスカッションが15分程度です。
当日は、例年同様に症例にどのように対応しているかに関して、「今わかっていること」「わかっていないこと」「どのようにすれば解決できるか」ということをパネリストとともに討論させていただきたいと考えます。双方向性に関しては例年のアンサーチェックももちろん行います。エビデンスに基づく包括的な視点を持ち、最適な医療を提供する方法論を検討したいと考えております。積極的なご参加のほどよろしくお願いいたします。

科学的根拠に基づいた医療（Evidence-Based Medicine: EBM）の実践において、臨床試験は通常行われている診療行為を科学的な視点で再評価するための重要な役割を担います。臨床試験の基本目的は、将来においてその治療をうけることになる患者集団に対して適用できる、その治療の情報を得ることにあります。臨床試験を通し治療のどのような効果が認められるか、治療の平均的効果はどの程度の大きさか、治療の効果は試験対象となった患者についてどの程度まで一様か、部分集団における治療の効果はどの程度の大きさか、得られた治療の効果は規定された枠外の対象に対しても同様に適用できるかといった問いに対して適切な回答を用意できるように、試験をデザインしデータを収集せねばなりません。しかし、実際に、臨床試験をできるだけ効率よく、しかも価値ある情報を十分に含んで得られるように計画・実施し、そこから得られる結果を適切な方法で纏めることは簡単なことではありません。本企画では、臨床試験のデザインと統計解析への誘いとして、この分野の経験豊富な若手エキスパートの二人の先生を招へいし、実際の臨床試験を俎上にあげ、基本的で不可欠な話題を解説します。フロアと議論しながらセッションを進行する予定です。奮ってのご参加をお待ちしています。

冠動脈硬化症に対する治療は、至適薬物療法（OMT）、冠動脈インターベンション（PCI）、冠動脈バイパス術（CABG）のいずれもが大きく進歩を遂げてきた。特に安定虚血性心疾患に対する治療法選択の考え方については、近年EBMが大きく変わってきている。虚血領域の小さい冠動脈疾患については薬物療法の効果が十分に高いとされ、無作為化臨床試験に基づくと冠血行再建には予後改善効果がないとされている。一方で虚血領域の大きな多枝、左主幹部病変については、様々なPCIとCABGの比較試験の結果が発表され、症例の選択基準が明確になってきている。しかし薬物療法とは異なり技術を要する治療であるPCIやCABGを実際の日常臨床で簡単に類型化することは難しい。特に腎機能など基礎疾患だけでなくFrailtyなどを含めた患者背景、病変の複雑さ、またFFRをはじめとする虚血判定における変化など考えなければならない要素が非常に多く存在する。このシンポジウムではEBMに基づいた国内外のガイドラインに基づいた治療指針と実臨床との乖離や日本と海外の差について、各分野のエキスパートに述べてもらい、内科、外科の立場も含めて議論をしていきたい。

わが国では著しい高齢化とともに、「心不全パンデミック」と称される心不全患者の急激な増加が現実のものとなってきている。このような時代を迎え、誰がどのように心不全患者の包括的ケアを行うかが、わが国の重要課題の一つとなっている。すなわち、心不全の発症・進展予防、急性期および慢性期治療、あるいは高度先進医療、さらには緩和ケアから終末期医療まで、幅広い心不全治療が行われるため、それぞれの地域において、大学病院、循環器専門病院、市中病院、診療所が連携して心不全治療を行う必要がある。特に、高齢心不全患者は合併疾患や社会的な背景が複雑であり、心不全の増悪により緊急入院すると在院日数が長くなる上、フレイルや独居あるいは老々介護などの問題も多く、退院時に入院前の生活環境に戻ることができなくなる場合がしばしばあるため、効果的な地域連携を行うことが最も重要である。しかしながら現状では、わが国全体でその仕組みが十分整えられているとは言いがたい。本セッションでは、いかに地域連携をおこなっていくべきか、すでに地域連携の取り組みを開始または企画しているグループから、参考にすべき点をご紹介していただき、今後、各地域での包括的心不全診療を良い方向へ発展させていくためにご議論いただく機会にできればと考えている。

2017年9月待望のリードレスペースメーカが日本の市場に登場した。静脈リードを必要としない極めて小型化されたシステムであり、最大のメリットは従来のペースメーカで様々な合併症の原因となっていたデバイスポケット、経静脈リード、鎖骨下静脈アクセスが不要になったことである。また、手技への習熟とともに手術時間の短縮、被曝量の低減が達成され、患者のみならず、術者にとっても負担が軽減される。さらに植え込み部の疼痛・不快感はなく、美容的意義にも優れ、患者の満足度の向上も相まって、今後大きな広がりが期待される。しかし、その一方で静脈アクセス（大腿静脈）に関連する血腫や血管損傷、心タンポナーデなど術中の合併症や、VVIRのみに限定されるペーシングモードなど、従来の経静脈ペースメーカにはなかった様々な問題がクローズアップされてきている。今回のシンポジウムでは、これらのリードレスペースメーカが持つベネフィットとリスクに関して、わが国でもっとも経験豊富なエキスパートによるディスカッションを行う予定である。安全でかつ有効なリードレスペースメーカの活かし方を探る絶好のチャンスであり、多くの方々のご参集を期待する。

冠動脈疾患関連死の約半数、心不全患者の死因の約40%は心臓突然死といわれる。心臓突然死の80％は心室頻拍／細動であり、そのリスク評価と治療が重要となる。心筋梗塞後／心不全患者における心臓突然死の最も重要なリスクとして左室収縮能低下が知られている。欧米では左室収縮能低下を伴う心筋梗塞／心不全患者を対象とした多くの臨床研究が行われてきた。MADITⅡでは左室駆出率30%以下の心筋梗塞例に対するICD治療の優位性が示され、SCD-HeFTでは虚血性・非虚血性に係わらずICD治療による心不全患者の予後改善が示された。しかし、ICDは強力な突然死予防治療であるが、不適切作動やデバイス関連合併症，精神的問題を惹起し、費用対効果も無視できない。
また，欧米と異なり日本の心筋梗塞後患者では心臓突然死の頻度は少ないと報告されている。さらに，ACEI/ARBやβ遮断薬などの適切な薬物治療が進歩した現在、DANISH試験では低心機能の非虚血性心不全患者に対するICDの優位性が示されなかった。したがって，欧米でのリスク層別化や治療戦略がそのまま日本人に適応できるかは未だに明らかでない。本シンポジウムでは我が国における心臓突然死の現状とマネージメントについて討論する。

「心筋症」の定義は、混乱が多く、現状でも日米欧で一致していない。本邦では2005年に作成された「心筋症，診断の手引きとその解説」に基づき、「高血圧や冠動脈疾患などの明らかな原因を有さず、心筋に病変の首座がある」特発性心筋症と、原因または全身疾患との関連が明らかな二次性心筋症（特定心筋症）に分類することが一般的である。近年、分子遺伝学的検査の進歩に伴い、特発性心筋症や二次性心筋症における発症メカニズムの解明が進んできた。さらに新しいバイオマーカーや画像診断法の臨床への導入により、心サルコイドーシスやアミロイドーシスなどの二次性心筋症の正確な診断を下すことが従来よりも可能になってきた。疾患特異的な治療が開発され、臨床適応されるようになってきた今日において、心筋症、特に二次性心筋症の正確な診断は、極めて重要である。本シンポジウムでは、二次性心筋症の発症メカニズムおよびバイオマーカーや画像診断の進歩に関する議論を通じて、二次性心筋症心筋症診療の新しい展開に繋げたい。

高血圧の発症進展に、腎臓や血管をはじめとする臓器・組織のみならず、中枢神経系/交感神経系-内分泌臓器ネットワークによる神経液性因子、食塩摂取過剰などにともなう体液貯留などさまざまな全身的要因が関与するという概念は、いまや確立されたものである。近年、種々の臓器・組織のネットワークが心血管系の恒常性維持に関与しており、その異常や破綻が心血管疾患に結びつくことが示唆されている。本シンポジウムでは、高血圧、高血圧心から、ひろく心血管疾患の発症・進展における多臓器連関の重要性について考えてみたい。

心臓サルコイドーシスは早期に的確な診断を行い、適切に治療介入することで予後の改善が期待されるが、その診断は必ずしも容易ではない。一方、近年FDG PETや心臓MRIなど画像診断の目覚ましい進歩が見られ同症の診療における有用性が高く評価されるようになった。また、心臓限局性サルコイドーシスの存在も認識されるようになった。これらを背景にして、2017年、日本循環器学会を中心に心臓サルコイドーシスの診療ガイドラインが作成され約1年が経過した。ガイドラインで新たに提唱された同症の診断指針については、今後、さらに症例を積み重ねることで検証と見直しが必要である。また、病態や治療に関して、新たな課題がみえてきたものもある。本シンポジウムでは、心臓サルコイドーシスの診療ガイドラインでは十分にはとり上げられなかったが、同症の診断および治療に際して、その重要性が明らかとなってきた最新の知見を紹介したい。また、診療ガイドラインの検証に関連した話題が提供できれば幸いである。

昨今、医療ビッグデータ時代とも称されるなかで、電子化された大量のデータを収集し分析する技術が、人工知能（AI; Artificial Intelligence）の発達などもあいまって、著しく進歩している。臨床研究も従来のRandomized Control Trial（RCT）から、Real world data（RWD）の活用、即ちビックデータからの知識生成（big data to knowledge）へとパラダイム変換している。RWDには、診療報酬請求データ、DPC、診療録、健診データなどの実診療行為に基づくデータが含まれる。このようなビックデータを活用することにより、患者やハイリスク症例をある程度の規模でグループ分けし、適切な治療法や発症予防法を開発するという新たな医療提供体制、医療技術開発のへ動きが注目されている。一方、不適切な分析が誤った研究結果を生む可能性もあり、適切なデータベース使用、分析や、より信頼度の高い方法論の開発などが重要である。本シンポジウムでは「ビッグデータを活用した新たな知識生成への探索とその課題」について議論したい。

肺高血圧症は、その成因により肺動脈性肺高血圧症（PAH）、左心性心疾患に伴う肺高血圧症、肺疾患・低酸素血症に伴う肺高血圧症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、その他の肺高血圧症に分類されるが、実際には複数の成因により病態が形成されていることが少なくない。特に近年、前毛細血管性肺高血圧症と後毛細血管性肺高血圧症合併例が頻度も高く、その治療も近年PAHの治療において広く普及している初期併用療法が必ずしも有効な訳ではないどころか、PAH特異的治療薬の使用そのものの是非についても慎重に判断するべきという点において、特に注目を集めている領域といえよう。肺高血圧治療薬が多く使用できるようになった現代において、治療選択肢が増えたが故に、適切な治療選択を行わなければかえって予後を悪化させることにつながりかねないことに注意が必要である。そこで本シンポジウムでは前・後毛細血管性肺高血圧症の合併例において、その適切な評価法と治療戦略についてディスカッションしたい。

PCSK9阻害剤の登場により、従来治療薬ではコントロールが困難であった心血管ハイリスク患者や家族性高コレステロール血症患者（FH）の強力LDLコレステロール低下療法が可能となっている。さらに、重症家族性高コレステロール血症患者でPSCK9阻害剤が有効でない症例に対しては肝臓におけるリポタンパクの生合成を阻害するMTP阻害剤も実用化され、LDLアフェレーシスが必要とされる重症家族性高コレステロール血症患者の脂質管理に大きな福音をもたらしている。このような新規LDLコレステロール低下療法の導入をふまえ、今後の脳心血管イベント抑制を見据えた脂質低下療法をどのように考えていけばよいのか、この領域のエキスパートの意見を伺うシンポジウムを企画した。

2011年4月に保険適用を受けて以来、すでに800例以上の植込み型補助人工心臓（iVAD）の装着が行われてきた。Primary iVAD装着の2年生存率は89%で、欧米を遙かに凌駕する優れた成績を上げてきている。わが国おいては、定型的なiVADの治療はほぼ確立されたと言ってよい。しかしながら、高度フレイル、神経・筋疾患に合併した心不全、（可逆性のある）高度肺高血圧、高度右心不全を伴った両心不全、さらには重症心不全化した先天性心疾患など、これから集学的に取組まなければならない疾患群が複数残されていることも事実である。本シンポジムでは、わが国を代表する施設からiVAD困難症例にどのように取組んでいるのかをご報告頂き、今後のiVAD治療のさらなる飛躍を目指すことを目的としている。

日本は未曽有の超高齢化社会を迎えている。近い将来、80歳代、90歳代という患者の増加は確実であり、加齢に伴い増加する疾患の対処方法をあらためて構築する必要があろう。心房細動はその一つの代表的な疾患である。心房細動診療は、2000年代数々のイノベーション、大規模臨床試験により大きな進歩を遂げたが、残念ながら、これらはすべてせいぜい70歳代までの心房細動患者を想定したものである。実際に、数多くの後期高齢者を前に、心房細動診療ガイドラインに記載された診療をそのまま単純に実行することに、抵抗感を生じない医師は少ないだろう。一般成人に通用する事実がどこまで後期高齢者、超高齢者に通用するのだろうか。あるいは、このような患者で特別に考慮しなければならない点は何だろうか。カテーテルアブレーション、直接作用型経口抗凝固薬は、前者の疑問に対応する必要があろう。心不全、腎機能低下、フレイル、転倒、骨折などは、後者の疑問に属する因子であろう。RCTという使いやすいツールが必ずしも適応できない患者に対する診療方針に関する答えは一つではないかもしれない。本シンポジウムでは、そのような問題意識の共有、ソルーションの提示をめざしたい。

高齢者社会を迎えた日本では、死因の第1位であり、生涯罹患率も約50%と予測されている「がん」への対応が社会的課題である。
一方、がん治療の進歩はめざましく、生命予後が向上し、働き盛りのがんサバイバーも増加する中で、Cardio-Oncology / Onco-Cardiologyという新たな学際領域が急速に成長しつつある。
これまでにも抗がん剤と心毒性、放射線治療と動脈硬化症、そして坦がん患者と血栓塞栓症等、医療現場では個別対応が続けられてきた。
しかしながら、いわゆる分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬が次々と登場し、心筋障害、冠疾患、不整脈、高血圧症、および血栓塞栓症等、がん治療関連の循環器系有害事象には組織な対応が必要とされている。
既に欧米では主要な病院でCardio-Oncology Unitが整備され、更に学会や国レベルの連携が進むことで、病態の解明、バイオマーカーや画像診断の開発、予防・診断・治療法の確立に向けた観察研究や介入試験等、学際領域の基礎・臨床・疫学研究が実施されている。
今後、日本でもガイドライン作成や地域医療連携体制の整備等、Cardio- Oncologyとして教育・診療・研究を支援する学際領域の産官学連携が必要である。

多くの循環器病の発症に遺伝要因が関与することは古くから知られており、20世紀までは単一遺伝子疾患を対象とした遺伝子変異解析研究が、循環器病の診断・発症メカニズムの解明・治療法の開発に大きく貢献してきた。また、21世紀に入り長足の進歩を遂げたゲノム情報取得技術を用いて、高頻度遺伝子多型情報とcommon diseaseとの関連が次々と明らかになり、成果は主に予防医学の分野で有用であることが示されつつある。しかし、多くの臨床循環器医にとってゲノム医療を実践するためにはいまだ多くの課題がある。保険収載されている疾患が少ないこともあげられる。本セッションでは、循環器ゲノム医療を実践しているフロントランナーやゲノム医療を実践する際の取り決めに詳しい専門家にご登壇いただく。ゲノム医療を実施するための具体的な知識・情報を共有し、循環器ゲノム医療の臨床面でのさらなる発展に繋がることを期待する。

僻地における循環器診療では、医療機関の全てに循環器専門医が常時いることは少ない。そのため心臓カテーテル検査治療を行える施設が限られ、心臓血管外科が24時間対応可能な施設は都道府県単位で幾つかしかないという基本的な問題を抱えている。すなわち、僻地で発症した循環器救急疾患患者は、直接治療可能な施設に適切な時間内に到着していない可能性がある。発症から治療開始までの時間が明らかに予後に影響する、ST上昇型心筋梗塞（STEMI）や虚血性脳卒中では、この基本的な地域医療体制が転帰に影響していることが示されている。この医療体制を補う可能性をも持つのが、僻地と地方総合病院の循環器救急連携システムである。心電図や画像評価を遠隔で行うなど診断過程における連携、ほぼ日本全体をカバーするドクターヘリを用いた搬送など患者搬送過程における連携、12誘導心電図伝送を含む救急隊（EMS）との連携、治療後の患者経過観察過程における連携が考えられる。更にSTEMIや虚血性脳卒中のみならず、高齢者の繰り返す心不全を急性期の対応から慢性期治療までどう診療するのか、といった在宅医療を含めた慢性の循環器疾患診療も課題と思われる。本シンポジウムでは、循環器急性疾患における僻地の構造的欠陥を補う各地域の取組やシステムについて提示いただき、各地域の特徴に当てはまる循環器診療システムのあるべき姿について討議いただきたい。

HFpEFは心不全症状や心不全兆候を有し、心エコーでLVEFが50％以上と定義される。左室肥大や左房拡大、拡張機能障害を有する特徴もあるが、その原因となる病態は様々である。症状とLVEF50％以上が必ずしも心不全に特異的とは言えず、HFpEFの診断、他の疾患との鑑別にしばしば難渋する。合併疾患を有する高齢者においては明らかなうっ血所見がない場合、HFpEFの診断を確定させる一つの指標というものはなく、総合的な判断が必要となる。安静時の心エコー所見でなく、運動負荷エコーが必要となることもある。本セッションではHFpEFの理解を深め、心エコーでとらえるHFpEFの特徴と重症度評価について検証する。心不全症状や心不全兆候を有するとき、1）心エコーでHFpEFと診断するための重要な指標は何か、2）そもそもLVEFが50％以上を収縮能が正常ととらえていいのか、3）HFpEFの重症度とは、という臨床的な疑問について考えていきたい。HFpEFはHFrEF同様に予後が不良であることが知られている。心エコーの指標でHFpEFの予後を予測できる指標があるのか考えたい。さらには、近年、心不全診断時のLVEFだけでなく、治療の経過でLVEFがどう動いていくのかも予後に関係することが盛んに報告されるようになってきた。心不全でLVEFが回復したheart failure with recovered EF（HFrecEF）とHFpEFの違いについてもまとめてみたい。

糖尿病合併症と言えば、古くから細小血管症と動脈硬化性の大血管疾患であり、最近では足病変、骨病変、手病変、歯周病、認知症、そして癌などが上げられる。一方、「心不全」は糖尿病合併症として記載されてこなかった。糖尿病患者で心不全が高頻度に発症することは、KannelらによるFramingham Heart Studyの報告をはじめ、古くから多数の観察研究がある。それにも拘らず、糖尿病合併症として心不全が認識されてこなかったのは、心不全の発症には、糖尿病自体ではなく、併存する高血圧、脂質異常症、CKDの寄与が大きいことや厳格な血糖管理にても心不全の発症を抑制することができないことなどによるのだろう。
最近、SGLT2阻害薬が2型糖尿病患者で心不全による入院、心血管死を顕著に抑制することが報告された。現在、そのメカニズムについて多面的に研究されており、その解明が待たれる。また、DPP4阻害薬やGLP-1受容体作動薬などのインクレチン関連薬の心血管系への保護効果も期待されている。エネルギー代謝の観点から糖尿病性心筋症あるいはインスリン抵抗性心筋症の病態解明も進んでいる。本シンポジウムでは、これまで議論されることが少なかった糖尿病に合併する心不全の病態解明と臨床の進歩についての最前線を討論したい。

2025年も差し迫っており、本邦において、これから本格化する「多死社会」への備えをどう築くかは、ひとつの社会問題である。最期までみていくための場所が医療機関だけではベッドが足らず、住み慣れた自宅や介護施設で最期を迎えられる環境づくりが必要である。これは超高齢社会で急増する心血管疾患において、最も重要であり、日本心臓病学会としても、いかに地域での診療を充実させ、在宅診療と病診連携を行うことができれば良いか、を考えている。このような背景のもと、本セッションでは、病院から地域の循環器疾患を扱う医療機関から、介護施設まで、現状の課題とその対策について議論を行い、これからの日本の医療の発展に寄与できればと思う。

社会の高齢化とともに循環器疾患患者の高齢化も進んでいる。循環器疾患の中でも心不全や心房細動を有する患者の多くは75歳以上であり、循環器疾患の管理だけでなく、高齢者に特有の病態である「フレイル」に注目する必要性が高くなっている。フレイルは加齢とともに臓器予備機能が衰える中でストレスに対する脆弱性を示す状態で要介護状態となるリスクが高い状態である。高齢者は身体的な衰えによりフレイルになるだけではなく､精神心理的な要因や社会的要因によっても脆弱性が亢進するため、多面的な評価を行うことが必要である。フレイル高齢者は要介護状態となるリスクが高いだけではなく、転倒・骨折､認知症、入院などとも関係するため、循環器疾患管理とともにフレイル対策を講じる必要がある。たとえば心不全にフレイルが合併することが多くなるが、その合併により心不全の予後が悪化することが明らかとなっている。心房細動においてフレイルの合併は抗凝固療法の実施に影響を及ぼし、またフレイルの存在は冠動脈疾患のリスクをあげることも明らかとなっている。このように高齢循環器疾患患者のマネジメントにおけるフレイルの意義がますます重要になっており、本シンポジウムにおいて現在の課題を整理し、今後の展望について議論を深めたい。

不治の病であった心房細動がアブレーションによって根治可能となってから15年以上が経過し、国内の年間心房細動アブレーション件数は約5万件にも上る。特に近年のバルーンアブレーションの普及は肺静脈隔離技術を容易にし、術者数の増加および治療の裾野拡大に寄与している。このように右肩上がりで発展してきた心房細動アブレーションであるが、合併症の発生や長期予後が不明である点など、問題点も多く残っている。我々は心房細動アブレーションの実態および意味を考えるために、今一度立ち止まって見直す時期に差し掛かってきているのかもしれない。
今検討すべき点は何なのだろうか？

• まず、治療適応について：高齢者、長期持続性症例や無症候性症例など、手術適応の有無に関する議論は未だ十分ではない。
• 心房細動アブレーションの合併症はどうなっているのか。特にバルーンアブレーションの普及後の変化は？
• 心房細動アブレーションは患者の生命予後改善に寄与しているのか？脳梗塞予防することに役立っているのだろうか？
• 心房細動アブレーションは患者のQOL改善に役立ち、そして患者の幸せに寄与しているのであろうか？
• 心房細動アブレーションの長期成績はどこまで明らかになっているのか？
• そして、心房細動アブレーションは医療経済上プラスに働いているのだろうか？

本シンポジウムでは、このような疑問に対して議論を行い、心房細動に対するアブレーション治療が何をもたらしているのかに迫ってみたい。

少子高齢化に伴う独居高齢者の増加、疾患の複雑化・慢性化など疾病構造の大きな変化が問題となっている。一方で、病床の減少、入院期間の短縮なども求められていることから、その人らしい暮らしを最期まで続けられるような地域包括ケアシステムの構築が急ピッチで進んできている。このような地域包括ケアにおいて、“心臓病＝命に直結”という強いイメージから苦手意識が浸透しており、循環器医療を地域から支える循環器専門クリニックの担う役割は非常に大きい。特に、高齢者心不全管理においては、「高齢者心不全患者の治療に関するステートメント」にもあるように、基幹病院よりはむしろ、かかりつけ実地医家等が地域で形成する診療体制こそがその診療において主体的な役割を果たす。そして、在宅・終末期医療や緩和医療の実践においても主体となるべきである。本セッションにおいては、JAPAN CARDIOLOGY CLINIC SESSIONと題して、循環器医療を地域から支える全国の循環器専門クリニックの様々な取り組みをご紹介頂き、循環器領域における地域包括ケアの充実とともに、時代に合った臨床心臓病学の発展につながることが期待される。

急性冠症候群が克服されつつある一方で、大動脈疾患が重大な問題となっている。東京CCUネットワークの報告でも急性大動脈症候群として大動脈解離や大動脈瘤破裂が増加し、また大動脈解離の約半数が院外心肺停止になっているとの報告もある。いまや、大動脈疾患は循環器医が克服しなければならない大きな課題である。確かに、大動脈瘤はCTや超音波装置で診断可能だが、破裂の予測は径だけでは決まらない。また、大動脈解離に至っては予測することさえできない。この予測できない現状に一筋の光を照らすことにできる手段が血管内視鏡によるイメージングである。血管内イメージングは冠動脈疾患で広く行われているが、IVUSやOCTは大動脈には役立たず、唯一内視鏡だけが内膜に近接でき、高解像度で観察できる手段である。内視鏡では、大動脈内膜や大動脈瘤周囲の亀裂や解離が明らかとなる。これが将来に引き起こされるイベントと関連するかもしれない。同時に内視鏡は大動脈の動脈硬化の著明な進行を明らかにした。大動脈では、他の血管に動脈硬化所見を認めない症例でも多彩な動脈硬化の進行が認められる。さらに、プラークの破綻に伴い多くのプラーク内容物が血中に放出されることも明らかになり、放出された物質も明らかにされるようになってきた。内視鏡によって明らかにされた大動脈の所見を提示し、今後の対策を循環器に関わる全員で議論できる土壌となるシンポジウムにしたい。

最近の介入試験結果から、積極的なLDLコレステロール低下療法の意義が我が国においても明らかになりつつある。さらにPCSK-9阻害薬に代表される最近の新しい脂質異常症治療薬の登場によって、更に低いレベルのLDLコレステロール値を達成することが可能となった。欧米においてはいくつかの臨床試験によって、LDLコレステロール30mg/dl程度の極めて低いレベルまでの心事故抑制効果と安全性が示されている。再発率の比較的低い我が国において、このような試験結果をどの様に応用するべきか、議論が必要である。また、新しく開発されつつある新しい脂質異常症治療薬やフィブラート製剤、そしてω3脂肪酸などがどのような位置づけにあるのかも、現在進行中の介入試験の動向と共に今一度議論の必要がある。
このパネルディスカッションでは、この分野のオピニオンリーダーにそれぞれのエビデンスを総括してもらい、現在の各治療法の現時点での位置付けと、今後の課題を論議していただきたい。

Vulnerable plaque は血管局所での血栓形成を伴って急性冠症候群（ACS）を発症する冠動脈病変と定義される。病理組織学的検討では、脂質に富む粥状硬化病変、薄い線維性被膜、炎症細胞の浸潤などを特徴とするいわゆるthin cap fibroatheroma（TCFA）が代表的な所見とされているが、最近の検討ではTCFAの破綻以外に、線維性被膜のerosion、石灰化結節などTCFA以外の特徴を持つ病変からもACSの発症することが明らかになっている。現在の日常臨床において、近い将来にACSを発症する可能性の高いVulnerable plaqueを高い精度で予測する方法は未だ確立されていないが、非侵襲的あるいは侵襲的な種々のイメージング評価法を用いて、発症リスクの高い病変を同定するための多面的なアプローチが精力的に行われている。さらに、観察時においてvulnerable plaqueと判断されても、病変の特徴は継時的に変化する可能性もあることから、予後に及ぼす影響はその後の生活習慣や薬物治療に影響を加味して考える必要がある。本パネルディスカッションでは、種々のモダリティを用いたvulnerable plaque診断の現状と問題点を提示していただき、リスク管理を含めた包括的な観点での今後の臨床につながる議論を展開することを目的とする。

TAVIが日本に導入され、大動脈弁狭窄を巡る課題は変化し続けている。次々に登場する新たなデバイスやエビデンスは、その変化のスピードを加速し、ハートチームの戦略に大きな影響を与えている。私達はTAVIありきでもなく、開胸術ありきでもなく、時代に即したエビデンスを的確に把握することが極めて重要である。
そこでこのセッションでは、循環器内科と心臓血管外科、それぞれの立場からハートチームで治療する大動脈弁狭窄症の今を再定義し、次へのステップとしたい。是非多くの皆様の参加を期待する！

　少子高齢化の進む日本の医療で問題となるのは介護負担増である。典型例を示せば高齢心不全患者数の増加が挙げられる。複数の疫学研究に基づく検討では、心不全患者数は2035 年まで増加し、それ以降もほぼ同じ水準で推移すると推計されている。対策は介護予防と再入院予防ということになるが、重要なのはフレイルと認知症への取り組みであり、この2点はどの疾患領域でも未解決な問題となっている。
　フレイルは「frailty」の日本語訳（造語）である。2014年に日本老年学会がfrailtyの認知度を高め、介入・予防の重要性を啓発するためにフレイルと表すことにした。フレイルの要素の中で特に重要なのは、骨格筋量減少と身体機能低下すなわちサルコペニアである。サルコペニアに関しては、日本サルコペニア・フレイル学会が診療ガイドライン2017年版を発行した。
　一方、認知症については、認知症ケアチームの入院基本料等加算が可能となり、各施設でも多職種チームによる取り組みがされており、心疾患患者にも介入を開始している。入院早期から退院後の生活を見据えたケアが必要になってきている。
　フレイルや認知症どちらも運動や疾病管理要素をどう取り入れていくかが重要である。今回のシンポジウムではフレイルと認知症の基本的な考え方と現場での具体例な取り組みを紹介していきたい。

先天性心疾患の発生頻度は、生産児の約1%を占めるとされる。日本では年間1万人あたり生まれ、そのうち90%の9,000人以上が成人する。したがって、成人先天性心疾患患者数は飛躍的に増加し、その診療内容も多岐にわたり、より複雑、高度なものとなっている（成人先天性心疾患診療ガイドリン、2017年改訂版）。そのため、多くの患者は生涯にわたる経過観察が必要であり、心機能の悪化、不整脈、心不全、再手術など身体的問題の他、妊娠、出産、就業、保健、結婚など心理・社会的課題も多く抱えている。このような背景のもと、成人先天性心疾患患者のQOLの改善には、成人先天性心疾患を専門とする循環器小児科医師に加え、循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、産科、内科、看護師、理学療法士、臨床心理士、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、継続的に、シームレスな関わりが必須といえる。本セッションでは、循環器外来、または病棟において、先天性心疾患患者のケアに不慣れであり、戸惑うことも多いスタッフに向け、成人先天性心疾患患者の現状、具体的なケアの実際を共通認識し、今からできること、やるべきことについてディスカッションを期待したい。

慢性心不全看護認定看護師は、安定期、増悪期、人生の最終段階にある慢性心不全患者とその家族に対し、継続的で水準の高い看護を提供することを目的としている。また、より質の高い医療を推進するため、多職種と協働し、包括的かつその時々のニーズにあった専門的な医療・ケアを提供できるように、医療チームの一員としての役割を担っている。2012年に60名の慢性心不全看護認定看護師が誕生してから、2018年6月現在349名の認定看護師が全国で活躍しており、その成果が少しずつ可視化されつつある。本セッションでは、大学病院・市中病院・クリニックといった役割の異なる施設や、集中治療室・病棟・外来・在宅医療といった役割の異なる立場で活躍する慢性心不全看護認定看護師の方々に、実践と評価、そしてチーム医療における役割を報告して頂く。そして、今後益々増加する慢性心不全患者とその家族に対し、医療チームの一員として慢性心不全看護認定看護師が担う役割と今後の課題について共有し、更なる一歩を踏み出すための議論の場としたい。

心疾患はわが国の死因第2位であり、今後のさらなる高齢化および生活習慣病の増加により、循環器疾患患者がますます増加することが予想される。循環器医療では、循環器疾患の発症予防のための生活習慣改善、つぎに循環器疾患の重症化予防のための早期治療介入、さらに重症度に応じた高度医療を行なっているが、すべて多職種連携で行われている。今後も質の高い循環器医療を提供していくため、多職種医療従事者をどのように養成していくかが、これからのわが国の医療情勢および医療の発展にむけて、最も重要な課題の1つである。　チーム医療に携わる医療者としては、臨床実践能力を高めることもさることながら、研究や教育活動を推進し、後進を育成することが非常に重要である。本セッションでは、循環器医療に携わる医療者の育成・参画の推進にむけて活躍をされている先生方から取り組みや課題を報告していただき、循環器医療に携わる医療者をどのように育てていくか、循環器医療全体としての参画とキャリアデザインを考える機会としたい。

急性心筋梗塞に対するカテーテルインターベンションやCCUにおける集中治療の進歩によって、その院内死亡率は10％以下にまで低下した。しかし、搬送前死亡を含めると、依然約40％が死に至る重篤な疾患であるため、発症予防が非常に重要である。一方、急性心筋梗塞を発症する数日〜数週間前に、一過性の胸痛や胸部圧迫感などの前兆を認める割合が約50％であることが、大阪、岩手、東京などにおけるレジストリ研究の結果から明らかになっている。この前兆は、心筋梗塞へ進展する前の不安定狭心症の症状と考えられ、この時点で適切に治療を行えば、心筋梗塞の発症を防止することができる。そのためには、「心筋梗塞は一旦発症すれば約40％が死に至る怖い病気であるが、前兆の時点で治療すれば発症を予防できること」、「前兆は比較的軽い一過性の胸痛、胸部圧迫感、心窩部不快感、胸焼け様症状として感じられること」を広く一般市民へ周知して、前兆の時点で受診行動へ導くことが重要である。そのために日本循環器学会が行っている啓発活動が「STOP MIキャンペーン」である。本セッションでは、学会、地方行政、医師、看護師それぞれの立場から、「STOP MIキャンペーン」の目標を達成するためにどの様に取り組んでいるかを発表していただき、それぞれの役割と課題、さらにはチームとして活動することの重要性を議論したい。

心臓MRIでは冠動脈の評価と心臓の形態評価や機能評価とともに、心筋の組織評価が可能である。特に虚血性心疾患では、急性心筋梗塞症への再潅流後から慢性期にかけて、心筋の経時的な評価を行うことで、予後評価にも有用であると考える。急性期の浮腫と壊死心筋をT2強調画像や遅延造影像を得ることで心筋障害の程度を評価できる一方、慢性期には境界明瞭な遅延像の広がりから心筋のバイアビリティを推測できる。さらに移植待機となるような重症虚血性心不全患者の選別において、心臓MRIは重要な位置を占めている。従来心臓MRIでは視覚的評価が主体であったが、昨今マルチコントラスト法やTagイメージングによる定量評価が可能となっている。4名の演者にはその最前線のケース提示をお願いした。
冠動脈壁のイメージングでは、いわゆる脆弱なプラークを描出することが可能であり、発症予防に向けた患者管理を含め、知見をお話しいただくこととした。

拡張型心筋症では、シネMRIによる壁運動の評価において、全周性の壁運動低下が認められ、局所壁運動低下を示す虚血性心筋症との鑑別診断に有用である。
また、ガドリニウム遅延造影MRIでは、遅延造影の認められない症例、冠動脈支配領域に限局し陳旧性心筋梗塞の造影パターンと鑑別の難しい症例、さらに、梗塞瘢痕の造影パターンとは明らかに区別される、心室中隔の中層に線状に認められる、いわゆる、Mid-LGEと呼ばれる造影パターンを示す症例の3群が認められ、虚血性心筋症、心筋炎、サルコイドーシス、拡張相肥大型心筋症等との鑑別診断に有用である。
さらに、遅延造影陽性を示す症例は、心不全治療に対する反応が悪く、突然死を含め、予後不良である。
MRIを用いた新しい検査法である、T1mapping法によるNative T1値、および心筋間質量の評価は、拡張型心筋症の診断、および予後評価に有用であり、臨床的な所見や遅延造影を示さない初期の拡張型心筋症の評価にも有用である可能性がある。

近年、心臓サルコイドーシスの診断に心臓MRIの有用性が認識されてきているが、どのように活用すればいいか、悩むケースがある。このセッションでは、どのような症例に心臓MRIを行っているか、心臓MRIによる診断のポイントは何か、シネ画像や遅延造影像の特徴的な形態やパターンなどについて、具体的な症例を見て知っていただきたく思っている。また鑑別診断に遅延造影像が有用であるが、右室病変を有する心臓サルコイドーシスと不整脈原性右室心筋症との鑑別はしばしば困難で、臨床上重要であり注意を要する。さらに心臓限局性サルコイドーシスの診断や、既知のサルコイドーシス患者の心病変検出に対する心臓MRIの有用性、デバイス植え込み後患者における心臓MRI検査の有用性と問題点、疾患活動性や治療評価に対する心臓MRIの有用性や限界等について、症例を通じて理解していただき、日常診療に心臓MRIを活用していただければ幸いである。

心不全の原因の診断は治療方針の決定に重要であり、虚血性心疾患と非虚血性心疾患の鑑別のみでなく、非虚血性心疾患のさらなる鑑別が必要となる。心不全の診断においては問診、理知学的所見から評価を行った上で形態、機能、電気生理の側面からの評価を主に行うこととなるが、被曝を伴わない心臓MRI（CMR）はシネMRI、心筋perfusion MRI、遅延造影MRI、T2強調画像などの撮像法により、心機能の測定や心筋の肥厚・菲薄化部位の詳細な検討や心筋の線維化（細胞外液分画増加）の描出が可能である。さらに近年、T1 mappingによりnative T1値の測定と間質のVolume算出が可能となり、遅延造影法では検出できなかった間質のびまん性の線維化の評価による非虚血性心疾患の検討が可能となっている。これらの撮像法を組み合わせることにより、虚血性・非虚血性の鑑別、非虚血性心疾患の中で心筋症の病型分類に道筋を付けることにより心不全の原因疾患を決定する上で非常に重要な情報を得ることが可能となる。

現在、循環器診療で心臓CTは欠かせない画像診断法であり、日常臨床に広く普及している。これまでの冠動脈狭窄やプラークの形態評価だけでなく、弁膜症や心筋疾患、成人先天性心疾患など心臓全体の構造評価も盛んに行われている。さらに心機能、心筋虚血やバイアビリティといった機能評価も行うようになってきた。多様化するCT画像診断において症例を提示いただきながら各分野の専門家に解説していただく。冠動脈石灰化スコアや心臓周囲脂肪の心血管イベントのリスク評価への活用から従来のSPECT検査と同等ですでに多くのエビデンスのある薬物負荷による心筋灌流（CT perfusion）、流体力学を応用したCTによる冠血流予備能（FFR-CT）を用いた心筋虚血診断。さらにPCIや不整脈疾患のカテーテル治療における画像支援や、3D プリンタを用いた3Dモデルを用いた成人先天性心疾患の手術計画や医学教育。本セッションでは、症例カンファレンス形式で心臓CT診断法ならびに、近未来で活用されるDeep learningや機械学習による画像解析の応用を紹介する。

平成30年度4月の診療報酬改定において“安定冠動脈疾患の適正なPCIについて、術前の検査により機能的虚血の存在が示されていること”という文言が追加された。すなわち、関連学会ガイドラインにおける虚血がない患者に対するPCIの不必要性が正式に認定されたのである。これらの現状を鑑みて虚血性心疾患治療において非侵襲的検査の代表である心エコー法の重要性がますます増してきたと言えよう。今回、6人の新進気鋭の医師から症例を持ち寄って頂き、これからの虚血性心疾患における心エコー法の現状と将来展望について学びたいと思う。

右室収縮能は様々な心疾患において独立した予後規定因子であると報告されており、日常臨床において右室収縮能評価の重要性は増している。しかし、右室は左室と異なり形態が複雑であるため、画像による詳細な機能評価が困難である。心エコー図法は簡便な心機能評価法であり、様々な右室収縮能の指標があるが、いずれも無視できない欠点があり、時には正確に右室収縮能を反映しないことがある。一方、心エコー図ほどの簡便性はないが、心臓MRIは直接仮定を用いることなく右室容積、右室駆出率を評価できる。他にも血流量や三次元形態といった特異かつ多彩な機能を有しており、今後より一層の活用が期待されている指標である。また、現在まであまり注目されていなかった右房機能に関しても、心疾患患者において不可的な役割を担っていることも報告されている。
本セッションでは、心疾患における右心系の評価の有用性を、症例ベースに議論する。

ストレインは、現在スペックルトラッキング法で通常評価されている。断層像に設定した関心領域が心周期にわたってどのように移動、変形するかを自動に追跡することにより、局所心筋の収縮拡張動態の詳細な定量評価が行える。一昔前までは、ストレインはほとんどが臨床研究のために使用されており、臨床応用には程遠い印象があった。しかしながら、様々な研究がなされ、スペックルトラッキングストレインにより評価された指標が、他の一般的な心エコー図指標と比較して、より鋭敏に心機能を評価できると報告されている。さらに、左室駆出率や左室拡張能指標では評価できない潜在的な心筋障害の検出にも有用であると報告されている。また、ストレインの計測方法も簡便で再現性も良くなり、臨床現場での一般的な使用まで確実に近づいてきていると言える。
本セッションでは、ストレインイメージングの臨床応用に関して、症例ベースで議論したい。

数多い脳梗塞患者全例に、経食道心エコー図検査を行うわけにはいかない。どのような患者で経食道心エコー図検査を行うのか、経胸壁心エコー図検査のピットフォールと経食道心エコー図検査のメリット、またそれらの所見から、治療法をどのように選択していくのかについて考える。

　大動脈弁狭窄症(aortic stenosis: AS)の重症度評価において、心エコー図検査が、その中心的な役割を果たしていることはいうまでもない。以前は、大動脈弁通過血流最大速度または大動脈弁平均圧較差を用いてASの重症度が評価されていた。しかしながら、左室収縮機能が低下した症例や左室が小さな症例では、大動脈弁通過血流量が低下し、流速や圧較差では過小評価となるため、現在のガイドラインでは、連続の式を用いた大動脈弁口面積(aortic valve area: AVA)による評価が推奨されている。その一方、左室流出路径、速度の計測など、心エコー図による計測誤差がAVAを算出する上での問題となっているとの指摘もある。
　本セッションでは、日常臨床で経験する、様々な病態における低潅流重度ASについて再考する。

HFpEFの概念が確立され10年以上が経過した。HFpEFは、HFrEFに匹敵する予後の悪さだが、いまだ革新的な治療法を見いだせていない。
しかし、左室駆出率が低下していない心不全症例の中には、介入可能な原因をもつ疾患や病態が含まれている。心不全診療の要は、徹底した対症療法と同時に、原疾患への介入である。症状や予後に直結する介入ポイントを見逃さないためには、系統だった考え方や見極め方が求められる。
‘左室駆出率が低下していない心不全に遭遇した時‘まず見極めるべき疾患、それはすなわち心筋障害以外の原因である。本セッションでは、多様な‘左室駆出率が低下していない心不全症例’を提示し、その診断法を学ぶ。そのため、あえて疾患名は出さず、ともに診断を導いていただきたい。若手医師を対象とするが、ハイレベルな疾患も含まれており、上級医にも勉強となる内容となっている。ぜひご来場いただき、多くの方々の日常診療にお役立ていただきたい。

左室駆出率の保たれた心不全、Heart failure with preserved ejection fraction (HFpEF)はいまだ有効な治療法が確立されていません。その原因の一つに、本疾患の多様性が指摘されております。本セッションでは、各症例を通じて、HFpEFの適切な病態把握と診断の重要性、介入可能な病態をみのがさず適切な治療をおこなうためのヒントを学んでもらえたらと思います。

　近年、高齢、重篤な合併症の存在など、開心術のリスクが高い大動脈弁狭窄症(aortic stenosis: AS)に対する非侵襲的な治療法として経カテーテル的大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI)が行なわれるようになってきた。治療の選択肢が広がったことにより、これまでは経過観察が妥当とされてきた症例についても、何らかの治療介入が検討されるようになってきた。
　本セッションでは、様々な心臓疾患を合併した、一筋縄にいかない高齢重度ASに対する治療について再考する。

　弁膜症の手術適応については、主に自覚症状と安静時心エコー図検査で決定される。術前に負荷心エコー図検査が行われる事は稀である。弁膜症の手術適応決定のために負荷心エコー図検査を行う事の有用性については、本邦のエビデンスは少なく明確でない点が多い。今回は弁膜症の中で、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症の２つの疾患に絞って検討する。この２つの疾患において、運動負荷またはドブタミン負荷心エコー図検査が手術適応決定に有用であった症例と、有用でなかった症例について検討することにより、負荷心エコー図検査の臨床的有用性と問題点、今後の展望について明らかにしたい。

心筋梗塞患者数は年々増加しており、それに伴う虚血性僧帽弁逆流は、僧帽弁逆流の成因として日常臨床で大きな割合を占める重要な疾患である。機能性逆流の中でも虚血性逆流は、左室形態異常や収縮能の局所性・不均一性、虚血再灌流の有無やタイミングによる短期的長期的逆流量の変化など多くの複雑な要因が関与する病態であり、心エコー図による壁運動・心筋性状や心機能・ドプラ法による逆流の観察はもちろん、心筋梗塞発症時の臨床的背景。PCIやCABGによる再灌流療法の状況、それに伴う短期・長期予後を踏まえたアプローチが必要である。近年目覚ましく進歩してきた虚血性僧帽弁逆流のメカニズム解明・治療ガイドラインの変化や治療法の現況について、症例を通しup-to-dateできることを期待する。

僧帽弁逆流に対する弁形成術の目覚ましい発展により、今や僧帽弁形成術は僧帽弁逸脱に対するスタンダードな外科手術であると言える。しかし、個々の症例における病変の形態的多様性に加え、ある程度の基本手技は確立されているとはいえ、形成術の手技・スキルにはそれぞれの心臓外科医のアイディアや経験によるところが大きく、カスタムメイドとなっているのが実際である。そのため、僧帽弁形成術の成否には術前・術中・術後を通しての内科医のサポートが大きく影響し、とくに経胸壁・経食道心エコー図を用いた正確な成因診断と適応判断、repairbilityの判定と術中術後診断を通した外科医との共同作業が重要となる。様々な病変における形成術の症例を通し、心臓血管外科医と視野を共にしながらよりよい形成術につながる知識を得るセッションとなる事を期待する。

心エコー図法により、運動より誘発される肺高血圧を非侵襲的に検出できるようになった。安静時の血行動態評価だけでは、労作時の病態を評価できないので、運動負荷心エコー図法による運動誘発肺高血圧の検出は、病態把握をする上で有用と思われる。しかし、運動誘発肺高血圧の意義は、個々の心血管疾患において異なっているので、運動負荷誘発性高血圧をひとくくりにして臨床的意義を論じることはできない。運動誘発肺高血圧を臨床応用するためには、肺動脈圧が高いことに対する心血管力学的理解を深め、運動時肺高血圧が出現する理由や、非侵襲的に測定する肺動脈圧の妥当性を理解しておかなくてならない。本セッションでは運動誘発肺高血圧の生理学的背景を座長が解説したのちに、症例を検討しながら、運動誘発肺高血圧の疑問点を議論する。そして、運動誘発肺高血圧の診断法、その臨床的意義、今後行われるべき研究の方向性について明らかにしたい。

地域包括医療の重要性が叫ばれて久しく、疾患人口の多い循環器領域においては、患者の高齢化と併存疾患を多く抱える特徴から、在宅医療、地域医療が重要とされており、実際に、保険償還も手厚くなされてきている。しかしながら、実臨床では、実地医家のworkloadは増加の一方で、多くの『すべきこと』と『情報』の氾濫が起こっている。医師は本来、地域包括の中ではplayerとして存在すべきであるが、manager として存在せざるを得ないことも多く経験する。このセッションでは、実際に退院困難となった症例を用いて、様々な職種（MSWや訪問看護師、在宅医療機器業者など）の適切な介入時期、より具体的な介入方法、保険の知識や使用可能な医療インフラの種類など、実臨床の医師が普段理解しにくいけれど重要なトピックを、まとめ、情報の取捨選択方法や、医師が本来のplayer位置で活躍する術を学べる構成されております。

一般住民を対象とした場合、肥満は心不全発症の危険因子である。しかし心不全発症後は低体重が予後不良因子であり、低体重の予防、改善を考えなければならない。心不全患者では蛋白異化が亢進するために、生体電気インピーダンス法で測定しても低筋肉量となる。適切な栄養指導と補助栄養を理論的に考える必要がある。そのため理想体重から総エネルギーを計算し、過不足ないカロリー計算を心掛ける。低栄養と判断された場合は、医薬品の経腸栄養剤や薬局などで市販されている補助栄養食品などを患者に指導・処方する。 急性心不全では慢性期よりもさらに栄養状態が悪化しやすい。また、理論的には栄養療法のみでなく、心臓リハビリと組み合わせることにより、相乗効果が得られる可能性がある。これらの事項は医師・看護師・栄養士・心臓リハビリスタッフなどの多職種チームで実践する必要がある。

皆さんは、心不全患者と家族の意思決定支援と聞くと、真っ先に何を思い描くでしょうか。「人生の最終段階における・・・」、「終末期における・・・」、「緩和ケア」などのWordを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか？しかし、心不全患者および家族に対する意思決定支援は、終末期や緩和ケアだけでなく、日常のあらゆる場面において存在しています。この企画では、心不全患者に関わる様々なフィールドから先生をお招きし、心不全患者および家族に対する意思決定支援の現状についてご発表頂き、経験豊富なコメンテーターの先生方を交え、会場の皆さまと共に、あらゆる場面における心不全患者および家族に対する意思決定支援について考えて参りたいと思います。

海外の心不全再入院予防や移行期支援の研究からは、退院後の看護師訪問の効果が注目されている。本邦でも病院からの退院後訪問や訪問看護が制度化されているが、その活用は少ない。本セッションの目指すところは、参加者が各地域において在宅医療・訪問看護と連携した心臓病診療を展開することにより、心不全患者の再入院予防やQOLの向上、介護負担軽減につなげることである。特に十分活用されていない「特別訪問看護指示書」についてケースを通じて使い方を提案する。退院時に心不全再入院リスクが高い患者に対しては、特別訪問看護指示書を発行することができる。これにより、退院直後の2週間まで頻回な訪問看護で在宅支援ができ、同時に訪問看護からの訪問リハビリも提供できる。慢性心不全認定看護師などによる退院後訪問や病院側での相談マネジメントと組み合わせることにより、在宅医療・訪問看護と連携した心臓病診療が地域に展開できるようになる。

　我が国の2人に1人ががんに罹患する時代となった。そのがんに対する治療の進歩はめざましく、新規の治療法も開発され、がん患者の予後は大幅に改善している。一方で、循環器医ががんに関連する診療を経験する機会も増加しており、がん治療に伴う心血管系副作用（心毒性）の増加への対応が注目されている。「腫瘍循環器学」はがんと循環器の両者が重なった学際領域を扱う臨床ならびに研究分野であり、我が国ではいまだエビデンスがほとんどなくエキスパートオピニオンに頼らざるを得ない領域でもある。しかし、昨年末に日本腫瘍循環器学会が創設され、腫瘍循環器学の専門家による診療と研究の道が開けた。このセッションでは、腫瘍循環器ケースカンファレンスを行い、この分野の対象となる代表的な症例に対して、エキスパートを交えてディスカッションする。最新の知見を共有するためにミニレクチャーと特別講演も行うので、実臨床で役立つ知識を習得していただきたい。

　心不全のチーム医療の重要性はすでに広く提唱されているところであり、心不全患者のより効果的かつシームレスな治療と管理のためには、病院内での多職種協働によるチーム医療に加えて、患者の居住する地域全体を視野にいれた医療連携や医療福祉連携が重要である。しかしながらこれらの連携の重要性が叫ばれている一方で、院内および地域社会における心不全のチーム医療の確立と効果的な実践にあたっては、個々の患者の病態や治療の多様性、医療機関間の診療体制や治療方針の相違、地域の特殊性、地域社会における多職種間での連携の課題など様々な障壁が存在する。本セッションではすでに心不全のチーム医療を実践している複数の施設から、実際の症例提示を通じて心不全チーム医療の推進の仕方、そこから見えてくる課題について議論をしていただき、参加者それぞれの施設、地域における心不全診療の質の改善を考えていただくきっかけとしていただきたい。

　近年の高齢化に伴い、高齢の心疾患患者が急増している。それに伴い、心臓救急の現場では、高齢患者の診療、急性期管理に多くの課題を抱えている。本セッションでは、高齢心疾患患者の診断上のピットフォール、高齢者特有の治療戦略、急性期管理におけるせん妄、患者家族の意思決定支援などのケースを通して、高齢者の急性期治療、管理のポイントを学ぶ。

　EFが低下した心不全患者の標準治療は、ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬を用いることを基本として、確立している。標準治療を受けた心不全患者においては、標準治療を受けていない患者に比べ、運動耐容能の改善、生命予後の改善が認められる。一方、心不全は多臓器にわたる併存症を有しており、併存症により心不全標準治療薬の使用が差し控えられている場面によく遭遇する。このセッションでは、併存疾患を有する心不全患者の標準治療薬の使い方について、症例を通して学んでいく。

　心不全の緩和ケアは、耐え難い苦痛を抱える心不全患者に対して提供されるべき医療であるが、その方法論についての議論は未成熟である。治療と並行して実施する緩和ケアを本態とする心不全の緩和ケアにおいて方針を決定する際には正解を導くことは時に容易ではなく、多面的に評価、議論を行い介入していく必要があり、多職種によるチームアプローチは必須となる。
　本セッションでは、日常診療の中で緩和ケアを実践していくためにそれぞれの職種はチームの中で何をすべきか、先駆的に心不全の緩和ケアに取り組んできた施設からの症例提示を通して課題解決に取り組む中でのチームアプローチについて紹介頂いた後に、緩和ケアの実践のために乗り越えなくてはならない課題を共有することを企図している。
　参加者の皆さまには心不全緩和ケアの抱える問題点を整理し、持ち帰り、さらに自施設において発展させる契機として頂きたい。

集中治療室に入室する患者のなかでもとりわけ心臓血管系疾患は、その方向性を見誤ると救命困難に至ることもあり、迅速な決断を要する場合も散見される。
心不全管理は心臓血管系集中治療の基本である。その重要な要素として①血行動態の評価、➁人工呼吸管理（気管挿管と抜管のタイミング）、③外科的治療の決断、④薬物治療の選択に関する知識は不可欠である。本セッションでは典型的な症例を若手医師から提示し、ディスカッサントからのコメントをもとに重要なポイントを共有する。明日からの日常診療にお役立ていただきたい。

補助循環装置は、安全に導入するだけではなく、維持および離脱へ向けた集学的治療が重要である。適切な抗凝固療法、輸血治療、体温管理、複数の血行動態指標を用いた血管作動薬の調整、呼吸器管理、栄養療法等を行うことによって、最良のアウトカムを達成しなければなない。特に心補助で大腿動静脈アクセスによる補助循環を導入する場合は、下肢虚血対策や送血が左心にとって後負荷となることを踏まえた評価と介入が必要である。実際の管理においては、心エコーによる離脱指標としての左室駆出時間やVelocity-Time Integralの意義、大動脈弁開放を得難い場合の左室ベント、重度右心不全における右心系の離脱指標、生理的補助循環であるVADへの移行タイミング、今後のImpellaの役割など、多くの課題が存在する。循環器内科医として知っておきたい補助循環装置の適応、導入、管理、離脱もしくはその限界まで、経験豊富な施設から症例を提示し、管理の実際と今後の展望について共有する。

本邦のCCUは純粋なcoronary care unitの形式をとる施設はまれで、いわゆるcardiovascular care unitとして心不全、不整脈、心筋炎、急性大動脈解離、急性肺血栓塞栓症などもその対象疾患としている。したがって本邦におけるCCUとは、主たる疾患は冠動脈疾患であるが、循環器内科医が担当する重症患者を収容する集中治療病棟である。近年、入院患者の高齢化に伴い併存疾患の治療が必要となり、循環器専門医のみではなく、他の専門医との連携が重要になってきた。本セッションでは、敗血症、急性期脳卒中、腹部救急疾患など代表的な症例を提示し、集中治療専門医や救急専門医も含む他の専門医との連携について、院内での連携から地域での連携に至るまで、循環器内科医が他の専門医とどのように連携体制を構築すべきか？について症例から学びたい。

近年、循環器科医がCCUで担当する患者の病態は多様化し、いわゆる全身管理が必要とされるようになってきた。すなわち循環器科医も多面的で高度の救急・集中治療の知識・技術が必要とされるようになってきた。たとえば、心肺停止自己心拍再開後の管理（蘇生後管理）も循環器科医の守備範囲になってきている。一方で、日本循環器学会の専門医カリキュラムにはこの項目はなく、循環器領域で蘇生後管理に精通した医師も少ない。多くの循環器科医は見よう見まねで身につけているのが現状ではないだろうか。そこで、本セッションではこの分野では先進的な施設での適応やプロトコールから最新の取り組みやアイデアまでをも紹介していただき、このセッションを聴講したすべての参加者が所属する施設において明日からのCCUにおける集中治療管理に少しでもお役に立てれば幸いである。

静注PGI₂製剤はPAH薬の中で最も血行動態の改善効果が高く、特に重症例においては、本剤を使用せずに長期生存を得る事は困難であるとされている。しかしながら、薬剤調整の煩雑さや長期のカテーテル留置などの要因により、最近はより簡便な経口薬が選択される傾向となっており、本来、静注PGI₂製剤が必要な症例に適切な治療が行われていない可能性が指摘されている。本セッションでは、どのような症例に静注PGI₂製剤の導入を検討すべきか、実症例を提示し、ディスカッションを行う。

• 日常に潜んでいる肺高血圧症の気づきポイントが分かる
• 疑わしい患者を診るこつが分かる
• 肺高血圧症の診断方法が分かる
• 肺高血圧症のおこるしくみがわかる
• 肺高血圧症の症状と重症度

　本年改訂された急性・慢性心不全診療ガイドラインでは，急性心不全の治療において時間経過と病態を踏まえたフローチャートがあらたに作成された。これは，診断を含めた初期対応の中で，病態把握を的確に行い，より早期の治療入を目的としたものである。バソプレシンV₂受容体拮抗薬であるトルバプタンは，うっ血を伴う心不全患者に対し，速やかな体液貯留改善効果および症状軽減効果を示し腎機能悪化が少ないことが日本のリアルワールドのデータとして蓄積され，世界に先駆けてガイドラインでは急性心不全に使用する薬剤として推奨クラスIIa，エビデンスレベルAとして推奨された。本セッションでは，経験豊富なエキスパートの先生に具体的な症例報告およびディスカッションをしていただく予定である。実臨床でトルバプタンを如何に安全に有効に使いこなすか，より多くの方が理解を深める場としたい。

　昨年，第7次医療計画が発表され，5疾病・5事業等の見直しにより，急性心筋梗塞に限らず、心不全等の合併症を含めた医療提供体制の構築を進める方向性が示された。その中で，慢性心不全患者の約40％が1年以内に再入院し、再入院予防の観点から見た回復期及び慢性期を含めた対策が必要である，と明示されている。バソプレシンV₂受容体拮抗薬であるトルバプタンは，本年改訂された急性・慢性心不全診療ガイドラインにおいて，HFrEFおよびHFpEFの項目で，共に推奨クラスⅡaで推奨され、急性心不全による入院加療中に導入され慢性期にも継続されるケースが増えつつある日本の実態を明示した。そこで、本セッションでは，エキスパートの先生に具体的な症例を提示していただき，トルバプタンをどのような場合に継続するのか，いつ止めれば良いのか，求めるアウトカムは何か，などについて議論をし，トルバプタンを継続投与する患者像について明らかにしていきたい。

本セッションでは、PCI後の抗血小板療法や抗凝固療法を進めていく上で出血を回避するための注意点や工夫点を出血リスクが高い症例を通じて学びます。
現在のPCI治療は、デバイスと手技の進歩により血栓性イベント発症が軽減した一方でPCIに伴う抗血小板療法による大出血の発現が患者予後を規定する因子であることがわかってきました。このような知見より欧米では、患者リスクを層別化しリスクに応じた治療が行われるようになりました。今回、特に出血リスクが高いと考えられる症例を通じて治療を行う際のリスクの層別化、注意点や工夫を考察します。

肺高血圧治療は、経口投与による肺血管拡張薬の登場により、臨床現場は大きな変化を遂げている。PGI2静脈内投与のみが有効であった時代は、感染などの合併症や処置の手間も多かったが、特にアップフロントと言われる初期から多剤を併用する治療法の出現、さらに吸入薬の登場により、多くの症例が静脈内投与を行わずコントロールできるようになってきた。しかし、これらの治療は、十分な理解をなく行われた場合には、静脈内投与移行時期の遅延、または不必要な投薬による医療資源の無駄遣いも起こし得る。本セミナーは、最新の治療概念であるアップフロント治療の正しい理解、経口薬・吸入薬の適応症例と副作用、そして経口薬時代ににおけるPGI2製剤静脈内投与の重要性を再確認できるまたとない機会である。積極的な参加を期待する。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症（CTEPH）は、器質化した血栓により肺動脈が慢性的に閉塞を起こし、肺高血圧症を合併し臨床症状として労作時の息切れなどを強く認め、2013年の肺高血圧症ニース分類では、第4群に分類されている。
肺動脈内膜摘除術、バルーン肺動脈形成術、薬物療法と近年治療の大きな進歩を遂げているCTEPH領域において、最近トピックスとなっている興味深い3症例を診療の第一線で活躍している若手の先生より提示いただき、診断のポイント、および患者一人ひとりの状態に適した治療法をより正確に選択するためのキーとなる項目について、参加者とディスカッションしたい。
同時に、CTEPH早期診断の実現のために、各診療科間の連携、および施設間の連携をより強化していくためには、どのポイントが重要かを理解する事も、本セッションのゴールとして設定したい。

漢方は、個々の患者の体質や東洋医学的パラメータの変化などを判断材料として治療薬を決定する、オーダーメイドの医学である。その考え方がエビデンスを重視する西洋医学とは一線を画すことから、特に循環器領域において日常的に用いられる治療法とはなり得ていない。しかし、機能性ディスペプシアや慢性硬膜下血腫、腹部術後の腸閉塞予防など、疾患・領域によってはその治療効果がデータ（エビデンス）として示されており、標準治療の一つとして漢方薬が用いられている。循環器診療においても、未だ十分なデータが集積されていないものの、症状緩和や病状改善に漢方薬が奏功するケースがあり、漢方によって患者満足度向上がもたらされることは少なくない。本セッションでは、症例を通じて循環器診療における漢方薬の使い方や効果について理解が深まり、エビデンス構築のきっかけとなることを期待したい。

高齢化社会の進展に伴い、非弁膜症性心房細動患者は増加しており、日本循環器学会の疫学調査によると2020年には約100万人に達すると想定されている。心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓症予防のためには抗凝固療法を適切に施行することが肝要だが、現在その主流は直接経口抗凝固薬（Direct Oral AntiCoagulant:DOAC）となっている。しかし、抗凝固療法中には副作用である出血のみならず、カテーテルアブレーションやPCIといった侵襲的手技時の出血や転倒・転落などの外的要因による出血、そして、抗凝固療法中に緊急手術が必要になり、その抗凝固作用を速やかに中和することが求められるケースに遭遇することも十分に考えられる。本セッションでは様々な診療科における抗凝固薬中和剤の使用経験について症例ベースで議論し、DOAC時代の抗凝固療法について改めて考える場となることを期待する。

急性・慢性心不全診療ガイドライン2017に掲載されたSGLT2阻害薬。この薬剤のポテンシャルを最大限発 揮するために、循環器専門医と糖尿病専門医の間でどのような連携を行うべきか。それぞれの立場からのケー ス紹介を通じて、考えて参りたいと思います。

　動脈硬化性疾患の治療において脂質低下療法は重要な役割を果たしている。二次予防患者における無作為化臨床試験でわが国でも強力なスタチンが予後改善に重要であることが再認識された。さらに、PCSK9阻害剤を含む脂質治療法の進歩は、動脈硬化性疾患患者の治療を大きく変えつつある。では、これらの治療法は実際の動脈硬化病変にどのような変化をもたらしているのであろうか。当セッションでは、侵襲的イメージングを中心とした様々なモダリティを用いて症例をご提示いただき、若手ディスカッサントのコメントとともに、二次予防患者おいてイメージングを活用した包括的全身管理について考察したい。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体（HoFH）は出生時から血中LDL-Cが高値であり、若年で心血管疾患（CVD）を発症するリスクが高く予後不良な疾患である。そのため、可及的早期に診断し血中LDL-Cを速やかに低下させることが重要となる。既存の治療薬とは異なるMTP阻害作用を有するHoFH治療薬 ロミタピドは、既存の治療薬に抵抗性を示すHoFH症例のLDL-C低下に有効と考えられる。確定診断されないHoFH症例が比較的多く潜在することが推定されるが、昨年日本動脈硬化学会からFH診療に関するガイドラインが発行されFHに関するLDL-C治療管理目標値が明確化されたことでHoFH疑い症例が増え始めている。既存治療薬でLDL-C管理目標値をクリアできない症例は積極的にHoFHを疑い早期に確定診断を行い、ロミタピド治療を開始することが重要と考えられる。
本セッションでは循環器領域においてロミタピドが投与されたHoFH症例を報告して頂き、実地臨床におけるロミタピド治療の導入時注意点や投与後の経過等についてディスカッションしていきたい。

高安動脈炎は大動脈本幹またはその主要分枝において自己免疫機転による血管炎が起こり、その結果として狭窄・閉塞・瘤を生じて様々な全身症状を呈する疾患である。近年、本疾患の病因解明に関する研究、画像診断法、治療法の進展により、本疾患の診断・治療がめざましく進化している一方、いまだに診断や治療に難渋するケースも数多く残されている。本セッションでは、循環器内科医が日常診療で遭遇する、もしくは見逃している可能性がある高安動脈炎の症例のなかから教訓的な症例を提示し、その診断・治療の方針についてエキス パートともに議論したいと考えている。
＜Take Home Messages＞

• 高安動脈炎の大動脈瘤の手術時期と術式がわかる
• 高安動脈炎の冠動脈狭窄の治療法がわかる
• 高安動脈炎の心血管病変の治療法がわかる
• 高安動脈炎の免疫抑制治療法がわかる

心不全でのβ遮断薬療法は、多くのエビデンスによってその有用性が確立されてきました。
しかしながら日常診療においては、β遮断薬の導入にあたり、心機能の評価、薬剤選択、増量・減量などの判断、専門医への紹介のタイミングなどで迷うこともあると思います。
本セッションでは、β遮断薬療法のポイントと薬剤の使い分けなどについて様々なケースから理解を深めていきます。

　心不全管理とは各治療パーツが持つ重みや意義を正確に把握し、移ろいゆく時間軸の中で適材適所にパズルを組み立てる作業、すなわち、脚本書きこそが心不全管理の神髄であり、まさにアートする世界である。
　心不全への治療効果はいま、頭打ち状態にある。なかでも、退院後の早期再入院率が一向に改善しない。再入院を予防するには、入院中に心不全を十二分に改善させる方策と、退院後の悪化の進行を緩める方策とがある。心不全急性期において最も予後改善を狙えるのは、実は慢性心不全治療の徹底である。しかし、導入時の副次作用－血圧低下、腎機能障害、心不全悪化などで、入れたくても入れられない現場がいる。ASVは、導入リスクの少ない血行動態改善薬、かつ、神経体液性因子調整薬として期待され、薬物至適化の導入サポートにも使える。つまり、ASVは再入院を防ぐ２つの方法のいずれにも目配せできる「名脇役」である。本セッションではケースを通してASVの役割を議論したい。

Fabry病は、α-galactosidase A活性の欠損・低下によってひき起こされるX連鎖性遺伝のライソゾーム病で、心臓、腎臓、脳血管などの臓器に影響を及ぼすことが知られている。さらに心FabryはFabry病の亜型で全身症状がなく、心異常のみを合併し、心臓の細胞に糖脂質が蓄積し、肥大型心筋症様病態等を来たすとされている。
本セッションでは、多様な臨床像を示すファブリー病に焦点をあて、演者の先生方に二次性心筋症の鑑別診断に至るまでの経緯を実症例から得た ‘キーワード’をもとに発表いただく。セッションを通じて、潜在患者の顕在化に役立てたい。

近年、抗凝固療法は新規抗凝固薬(以下、DOAC)の登場以降、大きく変化している。既存治療で使用されていたワルファリンとは異なり、有効性はそのままに安全性が飛躍的に向上し、薬剤濃度のモニタリングの必要がなくなり汎用性についても大きく向上した。このような背景から以前よりも多くの心房細動患者に投与される事となった。
しかし、DOACが広く使われるようになり、様々な問題も起きている。その一つが患者の背景を加味せず漫然と投与され続け、副作用を招いてしまうことである。そこで、本セッションでは必要な患者に必要な治療を、そして投与が不要な患者には投与を中止する、これら適正な治療ができるような目安、ヒントを一つでも見つけられるようなセッションにしたいと考えている。

先程のセッションでDOACの漫然投与の中止を考える瞬間についてディスカッションをしてきましたが、実際にDOAC投与中止を考えないといけない瞬間についても言及しておく必要がある。大出血の既往歴をはじめとする副作用が発現した際は勿論のこと、微小出血が続く場合、患者背景が急変した場合等、様々な要因を明確にするディスカッションを本セッションで開催したいと思う。適正な患者に、適正な量の、適正な期間、DOACを使うことにより、多くの脳卒中が予防できると考える。